税理士事務所のDXとは?必要性・課題から具体的な進め方、手段の選び方まで解説

税理士事務所のDXとは何かをIT化との違いから整理し、求められる背景やよくある課題、4つの推進手段の選び方、実際に進めるためのステップまで解説します。

「顧問先から届く紙の領収書を毎月手入力するのに時間がかかっている」「記帳や申告業務に追われ経営分析や相談対応まで手が回らない」こうした課題を持つ税理士の方は少なくありません。

このような状況が続くと、目の前の業務で手いっぱいになり、新しい顧問先を受け入れたり、今いる顧問先へのサポートを充実させたりすることが難しくなります。

税理士事務所のDXは、ソフトを入れて作業を速くするだけの取り組みではなく、顧問先にどのような価値を届けるかまで含めて見直す取り組みです。

まずは何のために進めるのかを決め、自事務所の規模や人材に合った手段から始めることが大切になります。

本記事では、DXとIT化の違い、DXが求められる背景、推進時によくある課題、4つの手段と選び方、実際に進めるためのステップまで解説します。DXに取り組みたいものの、何から手をつけるべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

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税理士事務所におけるDXとは

税理士事務所におけるDXとは、記帳や申告をデジタル化するだけでなく、業務の進め方や顧問先への提供価値まで見直す取り組みです。

経済産業省は「デジタルガバナンス・コード3.0」で、DXを次のように定義しています。

DXの定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

引用・参照:「デジタルガバナンス・コード3.0〜DX経営による企業価値向上に向けて〜」経済産業省

税理士事務所のDXは記帳代行や申告業務を効率化し、クラウド会計などを活用して日々の作業を減らし、顧問先の数字をより早く確認できるようにすることも含まれます。

さらに、そこで生まれた時間や集まったデータを使うことで、資金繰りや業績の変化を早めに伝えるなど、経営の相談にも対応しやすくなります。職員一人ひとりが単純作業に追われにくくなり、より専門性の高い業務に時間を使えるようになるでしょう。

DXとIT化の違い

IT化が「今ある業務をデジタルに置き換えること」であるのに対し、DXは「デジタル技術を使って、仕事の進め方や顧問先への支援の形まで変えていくこと」を指します。

たとえば、紙の請求書をPDFにする、押印を電子印鑑に変えるといった取り組みはIT化にあたります。両者の違いを整理すると、以下のとおりです。

項目

IT化

DX

目的

今ある業務を効率化する

仕事の進め方や顧問先への支援を見直す

対象

ひとつひとつの作業やツール

事務所全体の業務や働き方

税理士事務所での例

紙の請求書をPDF化する、試算表をメールで送る

顧問先と数字を共有し、月次面談で経営について話す

考え方

業務を改善するための手段

事務所の仕事のあり方を変える取り組み

成果の見方

作業時間がどれだけ減ったか

顧問先への支援や事務所の強みがどう変わったか

経済産業省が中堅・中小企業向けにまとめた手引きでも、DXは単に業務をデジタル化することとは分けて説明されています。まずIT化で日々の業務を効率化し、その先で仕事の進め方や顧問先への支援を見直していく、と考えるとわかりやすいでしょう。

たとえば、資料のデータ化や電子申告から始め、そこでできた時間を経営相談や提案に使う方法があります。このように段階を踏めば、人数の少ない事務所でも取り組みやすくなります。

引用・参照:「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き」経済産業省

税理士事務所にDXが求められる背景

税理士事務所にDXが求められている背景には、顧問先のクラウド会計の利用拡大や税理士の高齢化、制度の変更などがあります。

これまでの仕事の進め方では対応しにくい場面も増えており、事務所側にもデジタルを活用した見直しが求められています。

  • 顧問先側の変化(会計のクラウド化・電子化ニーズ)

  • 税理士の高齢化と事業承継・業務継続への対応

  • 制度面の変化(電子帳簿保存法・インボイス制度への対応)

顧問先側の変化(会計のクラウド化・電子化ニーズ)

顧問先である個人事業主や中小企業では、クラウド会計の利用が広がっています。背景には、行政手続きのデジタル化やインボイス制度などがあり、請求書や帳簿をオンラインで扱う機会も増えているでしょう。

MM総研の調査からも、個人事業主の間で会計ソフトが一定程度、利用されていることがわかります。

クラウド会計ソフトの利用状況調査(2026年3月末)
本調査では2025年(令和7年)分の確定申告を実施した個人事業主(15,845事業者)を対象とした。調査結果によると、会計ソフトを利用している個人事業主は40.9%となった。

引用・参照:「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2026年3月末)」MM総研

会計データをオンラインで確認する機会が増えるなか、税理士事務所でも、紙を前提としない情報共有や対応が必要になる場面が増えると考えられます。

こうした変化は、税理士事務所にとっても、顧問先とのやり取りや資料の受け取り方を見直すきっかけになるでしょう。顧問先の変化に合わせて、事務所側も仕事の進め方を見直していく必要があります。

税理士の高齢化と事業承継・業務継続への対応

税理士の高齢化が進むなか、限られた人数でも事務所の業務を続けられる体制づくりが必要になっています。日本税理士会連合会の調査では、60歳代以上の税理士が53.6%を占め、20〜30歳代は6.6%にとどまっていました。

引用・参照:「税理士実態調査 税理士の5割超が60歳以上 開業税理士は6割超える」会計事務所の広場

若い世代の担い手が少ない状況では、人を増やすだけで対応するのが難しい事務所もあるでしょう。そのため、日々の作業を減らすだけでなく、担当者が変わっても仕事を引き継ぎやすい状態にしておくことが大切です。

紙の資料や担当者ごとの管理が中心になっている場合、担当替えや事業承継の際に、確認や引き継ぎに時間がかかることがあります。顧問先のデータや業務の進め方をデジタルで共有しておけば、担当者が変わった場合でもスムーズに業務を進めやすくなるでしょう。

制度面の変化(電子帳簿保存法・インボイス制度への対応)

電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も、税理士事務所にDXが求められる背景です。2つの制度は目的が異なりますが、いずれも請求書や取引データを適切に保存・管理するための対応が求められます。

特に、メールやWebサービスを通じて請求書や領収書などを電子データで受け取る機会が増えるなか、税理士事務所が保存方法や対応について相談を受けることもあるでしょう。

電子帳簿保存法第7条では、電子取引に関するデータの保存について、次のように定められています。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第七条
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

引用・参照:「第七条 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」e-GOV 法令検索

また、インボイス制度では、仕入税額控除を受けるための要件として、帳簿と適格請求書等の保存が求められます。

No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)
適格請求書等保存方式の下では、一定の事項が記載された帳簿及び「適格請求書(インボイス)」等の保存が仕入税額控除の要件となります。

引用・参照:「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」国税庁

こうした制度に適切に対応するためには、顧問先から受け取ったデータをどこに保存するのか、誰が確認するのか、どのように会計処理へつなげるのかといった事務所内のルールを整えておくことが重要です。

税理士事務所のDX推進でよくある課題

税理士事務所でDXを進めようとしても、人材やこれまでの仕事の進め方、費用などが課題になり、思うように進まないこともあるでしょう。

ここでは、DXを進める際に多くの事務所が直面しやすい3つの課題を紹介します。

  • IT人材の不足とリテラシー格差

  • 紙文化からの脱却の難しさ

  • コスト・投資対効果の見えづらさ

IT人材の不足とリテラシー格差

税理士事務所がDXを進めるうえでは、ITに詳しい人材の不足と、職員ごとのスキル差への対応が大きな課題になります。

中小企業基盤整備機構の調査によると、DXに取り組むにあたっての課題の上位は人と予算に関する項目が並びました。

DXに取組むに当たっての課題
・ITに関わる人材が足りない:28.3%
・予算の確保が難しい:26.0%
・DX推進に関わる人材が足りない:25.6%

引用・参照:「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」中小企業基盤整備機構

数名から数十名ほどの事務所では、IT専任の職員を置くのが難しく、パソコンやシステムに詳しい職員が、通常業務の合間に対応しているケースも少なくありません。

また、設定や使い方が特定の職員に偏っていると、異動や退職の際に業務の引き継ぎが難しくなることがあるでしょう。

そのため、導入時の手順や設定内容、日々の運用方法を記録に残し、複数の職員が対応できるようにしておくことが重要です。

紙文化からの脱却の難しさ

税理士事務所のDXでは、事務所内だけでなく、顧問先との資料のやり取りまで含めて紙を減らしていく必要があります。

中小企業基盤整備機構の調査では、DXに既に取り組んでいる、または取り組みを検討している企業の具体的な取り組み内容として、「文書の電子化・ペーパーレス化」が55.8%で最も多くなりました。2位の「営業活動・会議のオンライン化」は37.1%で、大きな差があります。

DXの具体的な取組み内容
・文書の電子化・ペーパーレス化:55.8%
・営業活動・会議のオンライン化:37.1%

引用・参照:「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」中小企業基盤整備機構

紙の試算表を希望する顧問先もいるため、事務所側だけで一律にデジタル化を進めるのが難しい場合もあります。

そのため、事務所内の見直しだけでなく、顧問先の希望や対応状況も確認しながら、資料の提出方法を少しずつ見直していくとよいでしょう。

すべての顧問先で一斉に切り替えるのではなく、クラウド会計を利用している顧問先など、対応しやすいところから進めましょう。

コスト・投資対効果の見えづらさ

DXを進めるには、導入費用だけでなく、どれくらい効果が見込めるかを事前に把握しておくことが大切です。

中小企業基盤整備機構の調査によると、DXに取り組む予定がない理由として、効果の見えにくさや予算不足、必要性を感じていないことが挙げられています。

DXに取組む予定のない理由
・具体的な効果や成果が見えない:25.7%
・予算が不足している:20.6%
・自社の企業規模、業務内容を鑑み、DXが必要と思われない:18.1%

月額数万円のツールでも、どれだけ作業時間を減らせるのかが分からなければ、導入すべきか判断しづらくなります。

そこで、1社あたりの作業時間を記録し、時間単価を掛けてコストを算出します。その金額とツールの導入費用を比べることで、費用対効果を確認できるようになるでしょう。

具体的な数字に置き換えることで、導入するかどうかを感覚だけでなく、費用と効果を比べながら判断しやすくなります。

税理士事務所がDXを進める4つの手段

税理士事務所のDXは、ツール導入や外部支援、事務所内での取り組みなど、さまざまな方法で進められます。

どれかひとつに絞るのではなく、事務所の課題や状況に応じて複数の方法を組み合わせることが大切です。

  • 書籍・セミナーで学ぶ

  • 外部の支援会社・コンサルタントに依頼する

  • 自分たちで内製する

  • 専用ツールを導入する

書籍・セミナーで学ぶ

費用を抑えながら、DXの進め方を知りたい場合は、書籍やセミナーから始める方法があります。全体の流れや、つまずきやすいポイントを事前に把握できるのがメリットです。

主なメリットは、次のとおりです。

  • 数千円程度から始められる

  • 所内でDXについて話しやすくなる

  • 他事務所の事例や失敗例を参考にできる

会計事務所のDXを扱った書籍としては、「会計事務所のDXの進め方」があります。

『会計事務所のDXの進め方』
・著者:朝倉歩、宮川大介
・出版社:中央経済グループパブリッシング
・発売日:2024/10/10

DXを始める理由から準備、事務所ごとの進め方、顧客管理や社内業務、AI活用まで幅広く扱っています。現状分析シートなどの付録もあり、実際の業務を見直す際にも使いやすい内容です。

セミナーでは、税理士会の研修や会計ソフト会社が開催する無料セミナーなどがあります。実際の導入事例を聞けることも多いため、運用のイメージをつかみたい場合にも役立つでしょう。

外部の支援会社・コンサルタントに依頼する

事務所内だけでDXを進めるのが難しい場合は、外部の支援会社やコンサルタントに相談する方法があります。現状の整理から計画づくり、ツール選びまで一緒に進めてもらえるため、何から始めればよいか分からない場合にも役立つでしょう。

中小企業基盤整備機構の調査でも、以下のようにDXを進めるために外部の支援を求める声が見られます。

DXの推進に向けて期待する支援策
・補助金・助成金:43.9%
・中小企業のためのDX推進指針の策定・公表:21.0%
・研修制度:16.0%
・専門家の派遣:15.7%
・公的支援機関や専門家による経営相談:10.9%

引用・参照:「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」中小企業基盤整備機構

外部に依頼すると、現状整理や計画づくりを任せられ、事務所内の調査や比較にかかる時間を減らせます。
一方で、依頼内容によっては費用がかかるほか、支援終了後も運用を続けられる体制づくりが必要です。

依頼先を選ぶときは、税理士事務所や士業の支援実績があるか、特定のツールの導入だけを勧める会社ではないかを確認しておくと安心でしょう。

自分たちで内製する

自分たちでDXを進める場合は、Excelなどの既存ツールを活用するほか、生成AIを使って業務ツールや自動化の仕組みを作る方法もあります。

内製は事務所の業務に合わせて自由に作れる一方、特定の職員に知識や管理が偏りやすいため、属人化を防ぐ工夫も必要です。

既存の汎用ツールを使いこなす(Excel・無料ツール等)

新しいツールを導入しなくても、ExcelやGoogleスプレッドシート、無料の公的ツールを使って改善できる業務は多くあります。

Googleスプレッドシートには、プロジェクト管理やタスク管理のテンプレートが用意されているため、次のような管理にも活用できます。

  • 顧問先ごとの申告期限や進捗の管理

  • 担当者ごとの月次面談スケジュール

  • 資料の回収状況のチェック

複数人で同時に編集でき、変更履歴も確認できるため、ファイルをメールで送り合う必要がありません。どのファイルが最新版か分からなくなるといった手間も減らせるようになるでしょう。

無料で使える公的ツールには、中小企業基盤整備機構の「経営自己診断システム」があります。

引用・参照:「経営自己診断システム」独立行政法人 中小企業基盤整備機構

決算書の数値を入力すると、自社の財務状況や同業種の中小企業との比較、経営危険度などを確認できます。

まずはこうしたツールを使いながら、数字をもとに説明する機会を増やしていくのもよいでしょう。

生成AIを活用して業務ツールや自動化フローを内製する

ChatGPTなどの生成AIが広まり、プログラミングの知識が豊富になくても、業務に使う簡単なツールや自動化の仕組みを作りやすくなりました。

たとえば税理士事務所では、次のような使い方があります。

  • スプレッドシートの関数やGoogle Apps Scriptを作成し、集計や通知を自動化する

  • 面談の録音データから議事録の下書きを作る

  • 業種別のチェックリストや顧問先向けの説明文を作る

  • 試算表の数値をもとに、確認が必要な点を整理する

一方で、顧問先の決算データや個人情報を生成AIに入力する場合は注意が必要です。利用するサービスの設定やデータの扱いを確認したうえで、どの情報まで入力してよいかを事務所内で決めておく必要があります。

AIをどの業務にどう取り入れるかを詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

経営管理にAI(AIエージェント)を活用する方法とは?具体的な業務や活用事例を解説

また、財務分析での使い方や、ツール・プロンプトについて知りたい場合は、こちらの記事も参考になります。

財務分析をAIで実施する方法とは?ツールやプロンプト、最新のAI活用法まで解説

専用ツールを導入する

専用ツールを導入すれば、記帳や会計業務だけでなく、経営分析や顧問先とのやり取り、バックオフィス業務まで幅広く効率化できます。

事務所の課題に合ったツールを選び、必要に応じて複数を組み合わせることが大切です。

記帳・会計業務のクラウド化ツール

記帳や会計業務をクラウド化することは、税理士事務所のDXを進めるうえで基本となる取り組みです。紙やインストール型のソフトを中心に使っていると、データ共有や分析など、その先の業務改善にもつなげにくくなることもあるでしょう。

代表的なサービスには、次の3つがあります。

ツール

主な特徴

freee会計

銀行口座やクレジットカードなどと連携し、明細の自動取得や取引登録を効率化

マネーフォワード クラウド会計

2,300以上の金融関連サービスと連携し、部門・案件別の損益分析にも対応

弥生

MM総研の2026年3月調査で、個人事業主向けクラウド会計ソフトの事業者別シェア54.0%で首位

たとえばfreee会計では、スマートフォンで撮影した領収書や請求書を取り込み、AI-OCRでインボイス情報を読み取ったり、電子帳簿保存法で必要となる取引先・日付・金額などを推測入力したりできます。

引用・参照:「【Android】会計アプリでレシート類をスマホのカメラで取り込む」ヘルプセンター

実際には、顧問先がすでに使っている会計ソフトを導入することもあります。主要なサービスを一通り扱えるようにしておくと、顧問先ごとの状況に合わせて提案しやすくなります。

経営分析・可視化を担うAIツール

記帳や会計業務をクラウド化した後は、集まったデータを経営にどう生かすかが次の課題です。

経営分析ツールを使うと、会計データをグラフや指標で確認でき、顧問先への説明にも活用できます。導入することで、次のような使い方ができます。

  • 売上や利益、資金の動きをグラフで分かりやすく伝える

  • 気になる数字をその場で確認し、面談中の質問に答える

  • 予算や今後の見込みを示し、これからの経営について話し合う

当社が開発・運営するmetricsも、こうした経営分析を支援するクラウドツールです。

会計データを分かりやすく表示し、経営判断に必要な情報を確認できます。freeeやマネーフォワードとAPI連携できるため、顧問先ごとにデータを手作業で準備する手間も抑えられるでしょう。

搭載されている「AI CFO」では、確認したい指標を伝えるとAIが自動でダッシュボードを作成します。また、「来期は売上を20%伸ばしたい」といった方針をもとに、予算案の作成を支援することも可能です。

顧問先とのコミュニケーション・契約DXツール

事務所内の業務を効率化しても、顧問先とのやり取りが紙や郵送のままだと、手続きに時間がかかります。契約や資料の受け渡しをデジタル化することで、顧問契約の締結や日々のやり取りをスムーズにできるでしょう。

たとえば、次のようなツールがあります。

  • 電子契約クラウドサインfreeeサインを使って、顧問契約書や業務委託契約書をオンラインで締結する

  • ビジネスチャットChatworkSlackを使って、日々の質問や連絡を行う

  • ファイル共有・顧問先ポータルMyKomonなどを使って、証憑や決算資料を顧問先と決まった場所で共有・保管する

電子契約サービス「クラウドサイン」では、紙の契約書や押印を使わず、契約手続きをオンラインで完結できます。

引用・参照:「クラウドサインの基本機能」クラウドサイン

契約書を郵送し、返送を待つ必要がなくなるため、遠方の顧問先とも契約を進めやすくなります。紙の契約書にかかる印紙代を抑えられる点もメリットです。

バックオフィス全般の業務効率化ツール

給与計算や勤怠管理、定型的な入力作業をツールで効率化することで、事務所内の負担を減らせます。

代表的なものは、次のとおりです。

たとえば「ジョブカン勤怠管理」は、出勤管理・シフト管理・休暇申請など、必要な機能を組み合わせて使えるクラウドサービスです。シリーズ累計で30万社以上に導入されており、有料利用ユーザー数は300万を超えています。

引用・参照:「機能」ジョブカン勤怠管理

こうしたツールを事務所内で実際に使っておくと、顧問先にも具体的に提案しやすくなります。まずは自事務所で試し、使いやすさや注意点を確認してから勧めるとよいでしょう。

自事務所に合うDX推進手段の選び方

DXの推進手段を選ぶ際は、機能や費用だけでなく、自事務所の体制や顧問先との関係性まで含めて検討することが大切です。

事務所の規模・予算、ITリテラシーや人材、顧問先に提供したい価値という3つの観点でそれぞれ解説します。

  • 事務所の規模・予算で選ぶ

  • ITリテラシー・社内人材で選ぶ

  • 顧問先の特性・提供したい価値で選ぶ

事務所の規模・予算で選ぶ

事務所の規模によって、DXにかけられる費用や導入後の運用体制は異なります。

小規模な事務所では、まずは低コストのツールから始め、必要に応じて専用ツールや外部支援を取り入れる方法が良いでしょう。

一方、中・大規模な事務所では、職員数や顧問先数が多く、同じ作業を繰り返す場面も増えるため、専用ツールで業務の進め方をそろえることで、事務所全体の作業時間を減らしやすくなります。

事務所の規模ごとの目安は、次のとおりです。

事務所の規模

予算の目安

向いている手段

最初に取り組むこと

所長1人〜3名

月に数千円〜1万円台

書籍・セミナー+汎用ツール

書籍で基本を学び、スプレッドシートで進捗管理を始める

4〜10名

月に1〜5万円程度

専用ツールの導入

会計ソフトをクラウド化し、必要に応じて経営分析ツールも導入する

11名以上

月に5万円以上+必要に応じて外部委託

専用ツール+外部の支援

外部の支援も受けながら業務を見直し、事務所内のルールを整える

予算を一度に確保するのが難しい場合は、段階的に進めても問題ありません。まずは会計ソフトのクラウド化から始め、どれだけ作業時間を減らせたかを確認してから、次のツールを検討すると無理なく進められます。

また、IT導入補助金など、ツールの導入費用の一部を補助する制度もあります。要件や対象ツールは年度によって変わるため、利用を検討する際は最新の公募要領を確認してください。

ITリテラシー・社内人材で選ぶ

事務所内にITに詳しく、DXを進められる職員がいるかどうかで、内製が向いているかは大きく変わります。必要なのは高度なプログラミング知識よりも、今の業務を整理し、手順を分かりやすくまとめられる力です。

事務所の状況に合わせると、次のように考えられます。

所内の状況

内製の向き不向き

向いている手段

気をつけたい点

ツールに詳しい職員がいて、対応する時間もある

向いている

内製+汎用ツール、生成AIの活用

設定や手順を記録し、複数人が対応できるようにする

詳しい職員はいるが、通常業務で手いっぱい

一部は向いている

専用ツールを中心に、簡単な自動化だけ内製

設定や管理に手間がかかりすぎないツールを選ぶ

詳しい職員がいない

向いていない

専用ツール+外部の支援

導入支援やサポートの内容を確認して選ぶ

ITに詳しい職員がいなくても、DXを進めることはできます。会計ソフトとの連携や初期設定が簡単なツールを選べば、事務所側の負担を抑えながら導入できるでしょう。

人手に余裕がない事務所では、無理に内製するよりも、すでにあるツールや外部の支援を活用するほうが進めやすい場合もあります。

顧問先の特性・提供したい価値で選ぶ

顧問先が求めていることによって、選ぶべきツールや進め方も変わります。記帳や申告の効率化を重視する顧問先もいれば、数字をもとに経営の相談をしたい顧問先もいるためです。

顧問先の特性ごとに、向いている手段を整理すると次のようになります。

顧問先の特性

求められていること

向いている手段

中心になるツール

個人事業主・小規模法人が中心

記帳や申告を効率よく進めたい

記帳・会計業務のクラウド化

クラウド会計ソフト

成長中の中小企業が中心

数字をもとに経営の相談をしたい

経営分析・可視化ツールの導入

経営分析ツール、予実管理機能

融資・資金調達の相談が多い

資金繰りや今後の見通しを確認したい

予算管理・将来予測ができるツールの導入

経営分析ツール、事業計画の作成支援

顧問先が遠方に分散している

手続きをオンラインで進めたい

コミュニケーション・契約のDX

電子契約、ビジネスチャット

記帳のクラウド化だけでは、顧問先から見たサービスの違いが伝わりにくい場合があるため、他の事務所との差を出したい場合は、経営分析や資金繰り支援に力を入れる方法があります。

経営分析ツールを使えば、グラフやレポートを見せながら、数字の変化や今後の見通しについて話せるようになります。記帳や申告に加えて経営支援にも力を入れたい事務所では、こうしたツールも検討するとよいでしょう。

税理士事務所がDXを進める具体的なステップ

税理士事務所のDXは、現状を整理し、取り組む業務を絞り込みながら少しずつ進めていくのが基本です。

目的の設定から導入後の検証、顧問先への展開まで、実践しやすい流れに沿って進め方を整理します。

  • 1.DXで実現したい姿と目的の決定

  • 2.現状の業務・ツールの棚卸し

  • 3.優先順位とスケジュールの設定

  • 4.セキュリティと運用ルールの設計

  • 5.スモールスタートでの導入と検証

  • 6.顧問先を巻き込んだ展開

1.DXで実現したい姿と目的の決定

最初に決めるべきなのは、導入するツールではなく、DXによってどのような状態を目指すのかです。業務時間を減らすことだけを目的にすると、導入後にどのような成果を目指すのかが曖昧になり、効果を振り返りにくくなります。

まずは、事務所内と顧問先の両方の視点から目的を整理してみましょう。

  • 所内向けの例:月次面談の準備時間を、顧問先1社あたり60分から20分に短縮する

  • 顧問先向けの例:すべての顧問先に、翌月10営業日以内に月次の数字を共有する

  • 経営支援の例:年1回の決算報告だけでなく、四半期ごとに今後の見通しを話す機会を設ける

目的を決めるときは、できるだけ数字や期限を入れることが大切です。「効率化する」「顧問先の満足度を上げる」だけでは、後から達成できたかを確認しにくくなります。

また、この段階から職員にも意見を聞いておくと、その後の取り組みを進めやすくなります。所長だけで決めるのではなく、実際に業務を行う職員と一緒に考えることが重要です。

2.現状の業務・ツールの棚卸し

次に、今どの業務にどれくらい時間がかかっているのか、どのツールを使っているのかを整理します。実際に書き出してみると、時間がかかっていると思っていた業務が、それほど大きな負担ではなかったと分かることもあります。

整理する項目は、次のとおりです。

  • 業務名(記帳、試算表作成、月次面談の準備、申告書作成など)

  • 担当者と、対応できる人数

  • 1か月あたりにかかる時間

  • 使用しているツールやソフト

  • 紙でのやり取りが残っている業務

  • 特定の職員しか対応できない業務

作業時間は、分単位で正確に測る必要はありません。1か月ほど記録し、おおよその時間が分かれば十分です。

一覧にすると、時間がかかっている業務や、紙での作業が多く残っている部分が見つけやすくなります。まずは、負担の大きい業務から見直していくとよいでしょう。

3.優先順位とスケジュールの設定

次に、効果が出やすい業務から順に取り組み、無理のないスケジュールを決めます。一度にすべてを変えようとせず、少しずつ進めることが大切です。

優先順位は、以下のように「発生する回数と作業時間」「変更しやすいかどうか」を基準にすると考えやすくなります。

  • 最優先:毎月発生し、時間もかかるうえ、事務所内だけで見直せる業務

  • 次に取り組む:毎月発生するものの、顧問先の協力が必要な業務

  • 後回し:年に1回程度の業務や、すぐには変更しにくい業務

スケジュールを決めるときは、繁忙期を避けることも重要です。確定申告や3月決算で忙しい時期に新しいツールを導入しても、使い方を覚える時間を取りにくくなります。

繁忙期が落ち着いた時期にひとつずつ取り組み、数か月ごとに見直していくくらいのペースであれば、通常業務と並行しながら進めやすくなります。

4.セキュリティと運用ルールの設計

顧問先の財務データを扱う以上、ツールの導入とあわせてセキュリティや運用ルールも決めておく必要があります。クラウドサービスを使う場合は、誰がどのデータにアクセスできるのかを明確にしておくことが大切です。

導入前に、少なくとも次の項目は決めておきましょう。

  • アクセス権限:担当する顧問先に応じて、閲覧できる範囲を設定する

  • 多要素認証:パスワード以外の認証も使う

  • バックアップ:どのデータを、どの頻度で保存するかを決める

  • ログ管理:誰がいつデータを確認・変更したか分かるようにする

  • 退職・担当変更時の対応:アカウント停止や権限変更の手順を決めておく

税理士には守秘義務があるため、顧問先の情報を適切に管理することは欠かせません。ツールを選ぶ際も、多要素認証や操作履歴の確認など、必要なセキュリティ機能があるかを確認しておきましょう。

運用ルールは、細かくしすぎる必要はありません。重要な内容を簡潔にまとめ、職員全員が確認できる状態にしておくことが大切です。

5.スモールスタートでの導入と検証

最初から全体に広げるのではなく、一部の業務や担当者で試し、効果を確認しながら広げていく方法がおすすめです。一度に導入すると、問題が起きたときに原因を見つけにくくなります。

まずは、次のような形で始めると進めやすいでしょう。

  • 顧問先を3〜5社ほどに絞る

  • 担当者は1〜2名にする

  • 3か月ほど使い、変化を記録する

面談準備にかかる時間や経営の話に使える時間、顧問先からの反応などを確認しましょう。

思うような効果が出なかった場合は、ツールそのものだけでなく、使い方や手順、元になるデータに問題がないかも確認します。

うまくいった方法が見つかったら、実際に使った担当者が、結果や注意点を事務所内で共有するとよいでしょう。現場で使った人の話は、他の職員にも伝わりやすくなります。

6.顧問先を巻き込んだ展開

事務所内でツールの使い方や運用が固まってきたら、顧問先にも少しずつ広げていきます。事務所内での利用経験が少ない段階では、顧問先からの質問にすぐ対応できない場合もあるため、まずは内部で使い方を確認しておくと安心です。

顧問先への取り組みとしては、次のようなものがあります。

  • クラウド会計の導入支援を有料サービスとして案内する

  • 領収書や請求書の受け渡しを、郵送からクラウド共有に切り替える

  • 経営分析ツールの画面を共有し、顧問先もいつでも数字を確認できるようにする

案内するときは、事務所側の都合ではなく、顧問先にどんなメリットがあるかを伝えることが大切です。「郵送の手間が減る」「月の途中でも数字を確認できる」といった具体的な利点を示すと、理解も得やすくなります。

ここまで進んだ後は、経営支援やクラウド導入支援まで含めてサービス内容を整理し、必要に応じて提案してみるのもよいでしょう。

税理士事務所のDXなら「metrics」

ここまで見てきたように、税理士事務所のDXは、記帳や申告の効率化だけでなく、顧問先への経営支援にもつなげていくことが大切です。経営分析まで含めて取り組みたい場合は、当社が開発・運営するmetricsもご検討ください。

metricsは、会計データを分かりやすく整理し、経営判断に必要な情報を確認できるクラウド経営分析ツールです。全国の税理士法人や会計事務所のほか、BPO事業を行う企業でも利用されています。

2026年のアップデートではAI機能が強化され、AI CFOとのやり取りを通じて、予算管理やダッシュボードの作成も行えるようになりました。主な特徴は次の4つです。

  • 見やすいダッシュボードでスマートな経営支援を実現

  • 予算管理と将来予測で未来に繋がる経営を支援

  • AIが経営データを読み解き意思決定をサポート

  • ストレスフリーな初期設定と自動API連携

見やすいダッシュボードでスマートな経営支援を実現

顧問先ごとに、確認したい数字をまとめたダッシュボードを作成できます。一度設定すれば会計ソフトの更新内容が反映されるため、毎月Excelでレポートを作り直す手間を減らせます。

ダッシュボードでは、数字を一覧で確認するだけでなく、損益分岐点グラフなどを使って、売上や利益の動きを分かりやすく確認できるでしょう。

気になる数字はその場で仕訳まで確認できるため、面談後にあらためて調べる手間も減らせます。

予算管理と将来予測で未来に繋がる経営を支援

数字を入力すると損益の見込みが更新されるため、経営者と同じ画面を見ながら来期の計画を考えられます。

細かな予算を作る時間が取れない顧問先には、「自動予測」モードも利用できます。個別に予算を設定しなくても、過去の実績をもとに期末の見込みを算出できるため、少ない手間で今後の数字を確認できるでしょう。

作成した予算と自動予測はダッシュボード上で切り替えて確認でき、現在の実績と今後の見込みを比べながら、設備投資や採用などについて数字をもとに話し合えます。

AIが経営データを読み解き意思決定をサポート

metricsには、経営データの分析やダッシュボードの作成、予算案の作成を支援するAIエージェント「AI CFO」が搭載されています。資料の内容を確認し、気になる数値や確認したい内容を整理する際にも活用できる点も特徴です。

AIを使って確認すべき点を整理することで、経験が豊富でないスタッフでも分析や面談準備を進めやすくなります。

また、顧問先ごとの確認方法や業種ごとのチェック項目をナレッジとして登録しておけば、担当者が変わった場合も情報を引き継ぎやすくなります。特定の担当者だけに知識が偏るのを防ぎ、事務所内で一定の品質を保ちやすくなる点もメリットです。

実際の操作画面は、次のYouTube動画でも確認できます。

metrics AI CFO 機能紹介プレイリスト|YouTube

ストレスフリーな初期設定と自動API連携

freeeマネーフォワードとAPI連携でき、連携を許可すると、仕訳や帳票の取り込み、勘定科目の設定まで自動で行われます。

初回の連携では過去分を含む各期のデータをまとめて取得できるため、顧問先ごとにデータを手作業で整える手間を減らせるでしょう。新しく契約した顧問先でも、連携後すぐにダッシュボードを使い始められます。

データは定期的に自動更新されるため、面談のたびに会計ソフトから最新の数字を取り込み直す必要もありません。顧問先ごとのデータ更新にかかる作業を減らせる点もメリットです。

DXの手段として経営分析ツールを検討している方は、まず無料デモで実際の画面に触れてみてください。

リンクをクリックすると日程調整ページが開きます。ご都合のよい日時を選んで、ご予約ください。

税理士事務所へのmetrics導入事例

metricsは、税理士事務所ごとの課題や目指す支援内容に合わせて活用されています。

ここでは、業務の効率化や経営支援の充実につながった4つの導入事例を紹介します。

  • 伊藤会計事務所|属人化していた面談準備を定型化し、新人でも同じ品質の報告へ

  • エンジョイント税理士法人|試算表中心の報告会から、未来を話し合う場へ

  • スタートアップ税理士法人|コストと見られていた経理代行を、投資と呼べる支援へ

  • みらいと税理士法人|レポート作成の工数を削り、経営者との対話を能動的に

伊藤会計事務所|属人化していた面談準備を定型化し、新人でも同じ品質の報告へ

項目

内容

抱えていた課題

面談準備の内容や時間が担当者によって異なり、進め方が統一されていなかった

metricsによる解決策

面談前にmetricsのウィジェットを確認する手順を決め、準備の流れを統一した

効果

面談準備の時間を減らし、担当者による報告内容のばらつきを抑えられた

伊藤会計事務所様では、顧客との面談準備を担当者ごとに進めており、確認する内容や準備にかかる時間に差がありました。特に経験が比較的浅いスタッフは、何を確認すべきか判断するのに時間がかかることもありました。

そこで、面談前に「metricsで作成したウィジェットを確認する」という手順を決め、準備の進め方を統一しました。必要な情報を同じ流れで確認できるようになり、準備時間の短縮と報告内容のばらつきの軽減につながっています。

担当者が変わった場合も、これまで使っていたウィジェットを引き継げるため、引き継ぎを進めやすくなりました。経験に左右されにくい形で面談準備を行えるようになった点も、大きなメリットです。

エンジョイント税理士法人|試算表中心の報告会から、未来を話し合う場へ

項目

内容

抱えていた課題

試算表を中心に説明していたため、経験が比較的浅いメンバーほど過去から現在までの報告に時間がかかっていた

metricsによる解決策

報告時に使うウィジェットを全社で統一し、担当者によるばらつきを減らした

効果

過去の報告だけで終わらず、今後の経営について話す時間を増やせた

エンジョイント税理士法人様では、クライアントとの面談で、過去や現在の数字を確認するだけでなく、今後の経営について話すことを大切にしていました。一方、試算表を中心とした報告では、経験が比較的浅いメンバーは数字の説明に時間がかかり、将来の話まで十分にできないことが課題でした。

そこで、報告時に使うmetricsのウィジェットを全社で統一し、誰が担当しても同じ流れで説明できるようにしました。あわせて、日々の業務でもmetricsでの報告を意識して、必要な情報を整理するようにしています。

数字をグラフや指標で確認できるようになったことで、経験の浅いメンバーでも重要なポイントを伝えやすくなりました。その結果、過去の数字を説明するだけでなく、経営上の課題や今後の方針について話す面談が増えています。

スタートアップ税理士法人|コストと見られていた経理代行を、投資と呼べる支援へ

項目

内容

抱えていた課題

試算表を渡すだけでは、経営者が数字を経営や資金調達にどう生かせばよいか分かりにくかった

metricsによる解決策

freeeの部門・品目・取引先などの情報を連携し、入力した内容がレポートに反映されるようにした

効果

面談準備がしやすくなり、経営や資金調達の提案により多くの時間を使えるようになった

スタートアップ税理士法人様では、経理代行の価値を経営者に十分伝えにくいことが課題でした。試算表を渡すだけでは、その数字を経営や資金調達にどう生かせばよいか分かりにくく、経理代行が単なるコストとして見られることもありました。

metricsの導入後は、freeeの部門・品目・取引先などの情報を連携し、会計ソフトに入力した内容がレポートへ反映されるようになりました。最新の数字をグラフや指標で確認できるため、経営者への説明にもそのまま活用しやすくなっています。

また、面談に必要な数字をレポート上で確認できるようになり、面談のために別途資料を作成したり、数字を整理したりする負担も軽減されました。その結果、面談では数字の報告にとどまらず、経営方針や資金調達について話す機会も増えています。

実際に大規模な資金調達につながった事例もあり、税理士や社労士などグループ内で数字を共有しながら、連携して支援できるようになっています。

みらいと税理士法人|レポート作成の工数を削り、経営者との対話を能動的に

項目

内容

抱えていた課題

1社あたり1〜2時間、月次で最大30時間を財務分析やレポート作成に使っており、担当者によって内容にも差があった

metricsによる解決策

会計ソフトとのAPI連携でデータ更新を自動化し、ウィジェットの統一とAI CFOを活用した

効果

レポート作成が1〜2時間から約3分に短縮され、経営について話す時間を増やせた

みらいと税理士法人様では、財務分析やレポート作成に時間がかかることに加え、担当者によって内容に差が出ることも課題でした。1社あたり1〜2時間、月次では最大30時間を使っており、業種に合わせた分析ができるかどうかも担当者の経験に左右されていました。

そこで、会計ソフトとのAPI連携でデータの取得・更新を自動化し、報告に使うウィジェットも統一しました。さらに、AI CFOを使って「なぜこの数字が下がっているのか」といった点を確認できるようにし、分析や報告の準備を進めやすくしています。

その結果、レポート作成にかかる時間は1〜2時間から約3分まで短縮されました。「人をもう一人雇った場合、利益はどう変わるか」といった今後の経営について話す機会も増え、支援中の5社すべてが過去最高売上を更新しました。対応できる顧問先についても、5社から10社程度まで増やせる見通しが立っています。

まとめ

本記事では、税理士事務所におけるDXの意味や背景、課題、進め方について解説しました。

税理士事務所のDXは、紙をデータに置き換えるだけではありません。記帳や申告を効率化し、そこで生まれた時間を顧問先への経営支援に使うところまで含めて考えることが大切です。

また、クラウド会計の普及や電子帳簿保存法、インボイス制度への対応など、事務所を取り巻く環境も変わっています。一方で、IT人材の不足や紙での業務、費用対効果の分かりにくさなど、進めるうえでの課題もあります。

DXの方法は、書籍・セミナー、外部支援、内製、専用ツールの4つです。どれかひとつに絞るのではなく、事務所の規模や予算、人材、顧問先のニーズに合わせて組み合わせるとよいでしょう。

進める際は、まず目的と現状を整理し、効果が出やすい業務から少しずつ試すことが重要です。セキュリティや運用ルールも決めたうえで、うまくいった方法を事務所内や顧問先へ広げていきましょう。

まずは、月次報告など日常業務にどれくらい時間がかかっているかを記録してみてください。今の負担が分かれば、どこから見直すべきか判断しやすくなります。

「顧問先から届く紙の領収書を毎月手入力するのに時間がかかっている」「記帳や申告業務に追われ経営分析や相談対応まで手が回らない」こうした課題を持つ税理士の方は少なくありません。

このような状況が続くと、目の前の業務で手いっぱいになり、新しい顧問先を受け入れたり、今いる顧問先へのサポートを充実させたりすることが難しくなります。

税理士事務所のDXは、ソフトを入れて作業を速くするだけの取り組みではなく、顧問先にどのような価値を届けるかまで含めて見直す取り組みです。

まずは何のために進めるのかを決め、自事務所の規模や人材に合った手段から始めることが大切になります。

本記事では、DXとIT化の違い、DXが求められる背景、推進時によくある課題、4つの手段と選び方、実際に進めるためのステップまで解説します。DXに取り組みたいものの、何から手をつけるべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

経営支援ツールで税理士事務所のDXを支援

metricsは、税理士・中小企業向けのクラウド経営分析ツールです。
freeeやマネーフォワードとのAPI連携で財務データを自動取得し、月次レポートの作成や経営報告をスムーズにします。
自事務所に合ったDXを進めたい方や、日々の業務を効率化しながら顧問先への経営支援により力を入れたい方は、こちらをご覧ください。

税理士事務所におけるDXとは

税理士事務所におけるDXとは、記帳や申告をデジタル化するだけでなく、業務の進め方や顧問先への提供価値まで見直す取り組みです。

経済産業省は「デジタルガバナンス・コード3.0」で、DXを次のように定義しています。

DXの定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

引用・参照:「デジタルガバナンス・コード3.0〜DX経営による企業価値向上に向けて〜」経済産業省

税理士事務所のDXは記帳代行や申告業務を効率化し、クラウド会計などを活用して日々の作業を減らし、顧問先の数字をより早く確認できるようにすることも含まれます。

さらに、そこで生まれた時間や集まったデータを使うことで、資金繰りや業績の変化を早めに伝えるなど、経営の相談にも対応しやすくなります。職員一人ひとりが単純作業に追われにくくなり、より専門性の高い業務に時間を使えるようになるでしょう。

DXとIT化の違い

IT化が「今ある業務をデジタルに置き換えること」であるのに対し、DXは「デジタル技術を使って、仕事の進め方や顧問先への支援の形まで変えていくこと」を指します。

たとえば、紙の請求書をPDFにする、押印を電子印鑑に変えるといった取り組みはIT化にあたります。両者の違いを整理すると、以下のとおりです。

項目

IT化

DX

目的

今ある業務を効率化する

仕事の進め方や顧問先への支援を見直す

対象

ひとつひとつの作業やツール

事務所全体の業務や働き方

税理士事務所での例

紙の請求書をPDF化する、試算表をメールで送る

顧問先と数字を共有し、月次面談で経営について話す

考え方

業務を改善するための手段

事務所の仕事のあり方を変える取り組み

成果の見方

作業時間がどれだけ減ったか

顧問先への支援や事務所の強みがどう変わったか

経済産業省が中堅・中小企業向けにまとめた手引きでも、DXは単に業務をデジタル化することとは分けて説明されています。まずIT化で日々の業務を効率化し、その先で仕事の進め方や顧問先への支援を見直していく、と考えるとわかりやすいでしょう。

たとえば、資料のデータ化や電子申告から始め、そこでできた時間を経営相談や提案に使う方法があります。このように段階を踏めば、人数の少ない事務所でも取り組みやすくなります。

引用・参照:「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き」経済産業省

税理士事務所にDXが求められる背景

税理士事務所にDXが求められている背景には、顧問先のクラウド会計の利用拡大や税理士の高齢化、制度の変更などがあります。

これまでの仕事の進め方では対応しにくい場面も増えており、事務所側にもデジタルを活用した見直しが求められています。

  • 顧問先側の変化(会計のクラウド化・電子化ニーズ)

  • 税理士の高齢化と事業承継・業務継続への対応

  • 制度面の変化(電子帳簿保存法・インボイス制度への対応)

顧問先側の変化(会計のクラウド化・電子化ニーズ)

顧問先である個人事業主や中小企業では、クラウド会計の利用が広がっています。背景には、行政手続きのデジタル化やインボイス制度などがあり、請求書や帳簿をオンラインで扱う機会も増えているでしょう。

MM総研の調査からも、個人事業主の間で会計ソフトが一定程度、利用されていることがわかります。

クラウド会計ソフトの利用状況調査(2026年3月末)
本調査では2025年(令和7年)分の確定申告を実施した個人事業主(15,845事業者)を対象とした。調査結果によると、会計ソフトを利用している個人事業主は40.9%となった。

引用・参照:「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2026年3月末)」MM総研

会計データをオンラインで確認する機会が増えるなか、税理士事務所でも、紙を前提としない情報共有や対応が必要になる場面が増えると考えられます。

こうした変化は、税理士事務所にとっても、顧問先とのやり取りや資料の受け取り方を見直すきっかけになるでしょう。顧問先の変化に合わせて、事務所側も仕事の進め方を見直していく必要があります。

税理士の高齢化と事業承継・業務継続への対応

税理士の高齢化が進むなか、限られた人数でも事務所の業務を続けられる体制づくりが必要になっています。日本税理士会連合会の調査では、60歳代以上の税理士が53.6%を占め、20〜30歳代は6.6%にとどまっていました。

引用・参照:「税理士実態調査 税理士の5割超が60歳以上 開業税理士は6割超える」会計事務所の広場

若い世代の担い手が少ない状況では、人を増やすだけで対応するのが難しい事務所もあるでしょう。そのため、日々の作業を減らすだけでなく、担当者が変わっても仕事を引き継ぎやすい状態にしておくことが大切です。

紙の資料や担当者ごとの管理が中心になっている場合、担当替えや事業承継の際に、確認や引き継ぎに時間がかかることがあります。顧問先のデータや業務の進め方をデジタルで共有しておけば、担当者が変わった場合でもスムーズに業務を進めやすくなるでしょう。

制度面の変化(電子帳簿保存法・インボイス制度への対応)

電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も、税理士事務所にDXが求められる背景です。2つの制度は目的が異なりますが、いずれも請求書や取引データを適切に保存・管理するための対応が求められます。

特に、メールやWebサービスを通じて請求書や領収書などを電子データで受け取る機会が増えるなか、税理士事務所が保存方法や対応について相談を受けることもあるでしょう。

電子帳簿保存法第7条では、電子取引に関するデータの保存について、次のように定められています。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第七条
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

引用・参照:「第七条 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」e-GOV 法令検索

また、インボイス制度では、仕入税額控除を受けるための要件として、帳簿と適格請求書等の保存が求められます。

No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)
適格請求書等保存方式の下では、一定の事項が記載された帳簿及び「適格請求書(インボイス)」等の保存が仕入税額控除の要件となります。

引用・参照:「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」国税庁

こうした制度に適切に対応するためには、顧問先から受け取ったデータをどこに保存するのか、誰が確認するのか、どのように会計処理へつなげるのかといった事務所内のルールを整えておくことが重要です。

税理士事務所のDX推進でよくある課題

税理士事務所でDXを進めようとしても、人材やこれまでの仕事の進め方、費用などが課題になり、思うように進まないこともあるでしょう。

ここでは、DXを進める際に多くの事務所が直面しやすい3つの課題を紹介します。

  • IT人材の不足とリテラシー格差

  • 紙文化からの脱却の難しさ

  • コスト・投資対効果の見えづらさ

IT人材の不足とリテラシー格差

税理士事務所がDXを進めるうえでは、ITに詳しい人材の不足と、職員ごとのスキル差への対応が大きな課題になります。

中小企業基盤整備機構の調査によると、DXに取り組むにあたっての課題の上位は人と予算に関する項目が並びました。

DXに取組むに当たっての課題
・ITに関わる人材が足りない:28.3%
・予算の確保が難しい:26.0%
・DX推進に関わる人材が足りない:25.6%

引用・参照:「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」中小企業基盤整備機構

数名から数十名ほどの事務所では、IT専任の職員を置くのが難しく、パソコンやシステムに詳しい職員が、通常業務の合間に対応しているケースも少なくありません。

また、設定や使い方が特定の職員に偏っていると、異動や退職の際に業務の引き継ぎが難しくなることがあるでしょう。

そのため、導入時の手順や設定内容、日々の運用方法を記録に残し、複数の職員が対応できるようにしておくことが重要です。

紙文化からの脱却の難しさ

税理士事務所のDXでは、事務所内だけでなく、顧問先との資料のやり取りまで含めて紙を減らしていく必要があります。

中小企業基盤整備機構の調査では、DXに既に取り組んでいる、または取り組みを検討している企業の具体的な取り組み内容として、「文書の電子化・ペーパーレス化」が55.8%で最も多くなりました。2位の「営業活動・会議のオンライン化」は37.1%で、大きな差があります。

DXの具体的な取組み内容
・文書の電子化・ペーパーレス化:55.8%
・営業活動・会議のオンライン化:37.1%

引用・参照:「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」中小企業基盤整備機構

紙の試算表を希望する顧問先もいるため、事務所側だけで一律にデジタル化を進めるのが難しい場合もあります。

そのため、事務所内の見直しだけでなく、顧問先の希望や対応状況も確認しながら、資料の提出方法を少しずつ見直していくとよいでしょう。

すべての顧問先で一斉に切り替えるのではなく、クラウド会計を利用している顧問先など、対応しやすいところから進めましょう。

コスト・投資対効果の見えづらさ

DXを進めるには、導入費用だけでなく、どれくらい効果が見込めるかを事前に把握しておくことが大切です。

中小企業基盤整備機構の調査によると、DXに取り組む予定がない理由として、効果の見えにくさや予算不足、必要性を感じていないことが挙げられています。

DXに取組む予定のない理由
・具体的な効果や成果が見えない:25.7%
・予算が不足している:20.6%
・自社の企業規模、業務内容を鑑み、DXが必要と思われない:18.1%

月額数万円のツールでも、どれだけ作業時間を減らせるのかが分からなければ、導入すべきか判断しづらくなります。

そこで、1社あたりの作業時間を記録し、時間単価を掛けてコストを算出します。その金額とツールの導入費用を比べることで、費用対効果を確認できるようになるでしょう。

具体的な数字に置き換えることで、導入するかどうかを感覚だけでなく、費用と効果を比べながら判断しやすくなります。

税理士事務所がDXを進める4つの手段

税理士事務所のDXは、ツール導入や外部支援、事務所内での取り組みなど、さまざまな方法で進められます。

どれかひとつに絞るのではなく、事務所の課題や状況に応じて複数の方法を組み合わせることが大切です。

  • 書籍・セミナーで学ぶ

  • 外部の支援会社・コンサルタントに依頼する

  • 自分たちで内製する

  • 専用ツールを導入する

書籍・セミナーで学ぶ

費用を抑えながら、DXの進め方を知りたい場合は、書籍やセミナーから始める方法があります。全体の流れや、つまずきやすいポイントを事前に把握できるのがメリットです。

主なメリットは、次のとおりです。

  • 数千円程度から始められる

  • 所内でDXについて話しやすくなる

  • 他事務所の事例や失敗例を参考にできる

会計事務所のDXを扱った書籍としては、「会計事務所のDXの進め方」があります。

『会計事務所のDXの進め方』
・著者:朝倉歩、宮川大介
・出版社:中央経済グループパブリッシング
・発売日:2024/10/10

DXを始める理由から準備、事務所ごとの進め方、顧客管理や社内業務、AI活用まで幅広く扱っています。現状分析シートなどの付録もあり、実際の業務を見直す際にも使いやすい内容です。

セミナーでは、税理士会の研修や会計ソフト会社が開催する無料セミナーなどがあります。実際の導入事例を聞けることも多いため、運用のイメージをつかみたい場合にも役立つでしょう。

外部の支援会社・コンサルタントに依頼する

事務所内だけでDXを進めるのが難しい場合は、外部の支援会社やコンサルタントに相談する方法があります。現状の整理から計画づくり、ツール選びまで一緒に進めてもらえるため、何から始めればよいか分からない場合にも役立つでしょう。

中小企業基盤整備機構の調査でも、以下のようにDXを進めるために外部の支援を求める声が見られます。

DXの推進に向けて期待する支援策
・補助金・助成金:43.9%
・中小企業のためのDX推進指針の策定・公表:21.0%
・研修制度:16.0%
・専門家の派遣:15.7%
・公的支援機関や専門家による経営相談:10.9%

引用・参照:「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」中小企業基盤整備機構

外部に依頼すると、現状整理や計画づくりを任せられ、事務所内の調査や比較にかかる時間を減らせます。
一方で、依頼内容によっては費用がかかるほか、支援終了後も運用を続けられる体制づくりが必要です。

依頼先を選ぶときは、税理士事務所や士業の支援実績があるか、特定のツールの導入だけを勧める会社ではないかを確認しておくと安心でしょう。

自分たちで内製する

自分たちでDXを進める場合は、Excelなどの既存ツールを活用するほか、生成AIを使って業務ツールや自動化の仕組みを作る方法もあります。

内製は事務所の業務に合わせて自由に作れる一方、特定の職員に知識や管理が偏りやすいため、属人化を防ぐ工夫も必要です。

既存の汎用ツールを使いこなす(Excel・無料ツール等)

新しいツールを導入しなくても、ExcelやGoogleスプレッドシート、無料の公的ツールを使って改善できる業務は多くあります。

Googleスプレッドシートには、プロジェクト管理やタスク管理のテンプレートが用意されているため、次のような管理にも活用できます。

  • 顧問先ごとの申告期限や進捗の管理

  • 担当者ごとの月次面談スケジュール

  • 資料の回収状況のチェック

複数人で同時に編集でき、変更履歴も確認できるため、ファイルをメールで送り合う必要がありません。どのファイルが最新版か分からなくなるといった手間も減らせるようになるでしょう。

無料で使える公的ツールには、中小企業基盤整備機構の「経営自己診断システム」があります。

引用・参照:「経営自己診断システム」独立行政法人 中小企業基盤整備機構

決算書の数値を入力すると、自社の財務状況や同業種の中小企業との比較、経営危険度などを確認できます。

まずはこうしたツールを使いながら、数字をもとに説明する機会を増やしていくのもよいでしょう。

生成AIを活用して業務ツールや自動化フローを内製する

ChatGPTなどの生成AIが広まり、プログラミングの知識が豊富になくても、業務に使う簡単なツールや自動化の仕組みを作りやすくなりました。

たとえば税理士事務所では、次のような使い方があります。

  • スプレッドシートの関数やGoogle Apps Scriptを作成し、集計や通知を自動化する

  • 面談の録音データから議事録の下書きを作る

  • 業種別のチェックリストや顧問先向けの説明文を作る

  • 試算表の数値をもとに、確認が必要な点を整理する

一方で、顧問先の決算データや個人情報を生成AIに入力する場合は注意が必要です。利用するサービスの設定やデータの扱いを確認したうえで、どの情報まで入力してよいかを事務所内で決めておく必要があります。

AIをどの業務にどう取り入れるかを詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

経営管理にAI(AIエージェント)を活用する方法とは?具体的な業務や活用事例を解説

また、財務分析での使い方や、ツール・プロンプトについて知りたい場合は、こちらの記事も参考になります。

財務分析をAIで実施する方法とは?ツールやプロンプト、最新のAI活用法まで解説

専用ツールを導入する

専用ツールを導入すれば、記帳や会計業務だけでなく、経営分析や顧問先とのやり取り、バックオフィス業務まで幅広く効率化できます。

事務所の課題に合ったツールを選び、必要に応じて複数を組み合わせることが大切です。

記帳・会計業務のクラウド化ツール

記帳や会計業務をクラウド化することは、税理士事務所のDXを進めるうえで基本となる取り組みです。紙やインストール型のソフトを中心に使っていると、データ共有や分析など、その先の業務改善にもつなげにくくなることもあるでしょう。

代表的なサービスには、次の3つがあります。

ツール

主な特徴

freee会計

銀行口座やクレジットカードなどと連携し、明細の自動取得や取引登録を効率化

マネーフォワード クラウド会計

2,300以上の金融関連サービスと連携し、部門・案件別の損益分析にも対応

弥生

MM総研の2026年3月調査で、個人事業主向けクラウド会計ソフトの事業者別シェア54.0%で首位

たとえばfreee会計では、スマートフォンで撮影した領収書や請求書を取り込み、AI-OCRでインボイス情報を読み取ったり、電子帳簿保存法で必要となる取引先・日付・金額などを推測入力したりできます。

引用・参照:「【Android】会計アプリでレシート類をスマホのカメラで取り込む」ヘルプセンター

実際には、顧問先がすでに使っている会計ソフトを導入することもあります。主要なサービスを一通り扱えるようにしておくと、顧問先ごとの状況に合わせて提案しやすくなります。

経営分析・可視化を担うAIツール

記帳や会計業務をクラウド化した後は、集まったデータを経営にどう生かすかが次の課題です。

経営分析ツールを使うと、会計データをグラフや指標で確認でき、顧問先への説明にも活用できます。導入することで、次のような使い方ができます。

  • 売上や利益、資金の動きをグラフで分かりやすく伝える

  • 気になる数字をその場で確認し、面談中の質問に答える

  • 予算や今後の見込みを示し、これからの経営について話し合う

当社が開発・運営するmetricsも、こうした経営分析を支援するクラウドツールです。

会計データを分かりやすく表示し、経営判断に必要な情報を確認できます。freeeやマネーフォワードとAPI連携できるため、顧問先ごとにデータを手作業で準備する手間も抑えられるでしょう。

搭載されている「AI CFO」では、確認したい指標を伝えるとAIが自動でダッシュボードを作成します。また、「来期は売上を20%伸ばしたい」といった方針をもとに、予算案の作成を支援することも可能です。

顧問先とのコミュニケーション・契約DXツール

事務所内の業務を効率化しても、顧問先とのやり取りが紙や郵送のままだと、手続きに時間がかかります。契約や資料の受け渡しをデジタル化することで、顧問契約の締結や日々のやり取りをスムーズにできるでしょう。

たとえば、次のようなツールがあります。

  • 電子契約クラウドサインfreeeサインを使って、顧問契約書や業務委託契約書をオンラインで締結する

  • ビジネスチャットChatworkSlackを使って、日々の質問や連絡を行う

  • ファイル共有・顧問先ポータルMyKomonなどを使って、証憑や決算資料を顧問先と決まった場所で共有・保管する

電子契約サービス「クラウドサイン」では、紙の契約書や押印を使わず、契約手続きをオンラインで完結できます。

引用・参照:「クラウドサインの基本機能」クラウドサイン

契約書を郵送し、返送を待つ必要がなくなるため、遠方の顧問先とも契約を進めやすくなります。紙の契約書にかかる印紙代を抑えられる点もメリットです。

バックオフィス全般の業務効率化ツール

給与計算や勤怠管理、定型的な入力作業をツールで効率化することで、事務所内の負担を減らせます。

代表的なものは、次のとおりです。

たとえば「ジョブカン勤怠管理」は、出勤管理・シフト管理・休暇申請など、必要な機能を組み合わせて使えるクラウドサービスです。シリーズ累計で30万社以上に導入されており、有料利用ユーザー数は300万を超えています。

引用・参照:「機能」ジョブカン勤怠管理

こうしたツールを事務所内で実際に使っておくと、顧問先にも具体的に提案しやすくなります。まずは自事務所で試し、使いやすさや注意点を確認してから勧めるとよいでしょう。

自事務所に合うDX推進手段の選び方

DXの推進手段を選ぶ際は、機能や費用だけでなく、自事務所の体制や顧問先との関係性まで含めて検討することが大切です。

事務所の規模・予算、ITリテラシーや人材、顧問先に提供したい価値という3つの観点でそれぞれ解説します。

  • 事務所の規模・予算で選ぶ

  • ITリテラシー・社内人材で選ぶ

  • 顧問先の特性・提供したい価値で選ぶ

事務所の規模・予算で選ぶ

事務所の規模によって、DXにかけられる費用や導入後の運用体制は異なります。

小規模な事務所では、まずは低コストのツールから始め、必要に応じて専用ツールや外部支援を取り入れる方法が良いでしょう。

一方、中・大規模な事務所では、職員数や顧問先数が多く、同じ作業を繰り返す場面も増えるため、専用ツールで業務の進め方をそろえることで、事務所全体の作業時間を減らしやすくなります。

事務所の規模ごとの目安は、次のとおりです。

事務所の規模

予算の目安

向いている手段

最初に取り組むこと

所長1人〜3名

月に数千円〜1万円台

書籍・セミナー+汎用ツール

書籍で基本を学び、スプレッドシートで進捗管理を始める

4〜10名

月に1〜5万円程度

専用ツールの導入

会計ソフトをクラウド化し、必要に応じて経営分析ツールも導入する

11名以上

月に5万円以上+必要に応じて外部委託

専用ツール+外部の支援

外部の支援も受けながら業務を見直し、事務所内のルールを整える

予算を一度に確保するのが難しい場合は、段階的に進めても問題ありません。まずは会計ソフトのクラウド化から始め、どれだけ作業時間を減らせたかを確認してから、次のツールを検討すると無理なく進められます。

また、IT導入補助金など、ツールの導入費用の一部を補助する制度もあります。要件や対象ツールは年度によって変わるため、利用を検討する際は最新の公募要領を確認してください。

ITリテラシー・社内人材で選ぶ

事務所内にITに詳しく、DXを進められる職員がいるかどうかで、内製が向いているかは大きく変わります。必要なのは高度なプログラミング知識よりも、今の業務を整理し、手順を分かりやすくまとめられる力です。

事務所の状況に合わせると、次のように考えられます。

所内の状況

内製の向き不向き

向いている手段

気をつけたい点

ツールに詳しい職員がいて、対応する時間もある

向いている

内製+汎用ツール、生成AIの活用

設定や手順を記録し、複数人が対応できるようにする

詳しい職員はいるが、通常業務で手いっぱい

一部は向いている

専用ツールを中心に、簡単な自動化だけ内製

設定や管理に手間がかかりすぎないツールを選ぶ

詳しい職員がいない

向いていない

専用ツール+外部の支援

導入支援やサポートの内容を確認して選ぶ

ITに詳しい職員がいなくても、DXを進めることはできます。会計ソフトとの連携や初期設定が簡単なツールを選べば、事務所側の負担を抑えながら導入できるでしょう。

人手に余裕がない事務所では、無理に内製するよりも、すでにあるツールや外部の支援を活用するほうが進めやすい場合もあります。

顧問先の特性・提供したい価値で選ぶ

顧問先が求めていることによって、選ぶべきツールや進め方も変わります。記帳や申告の効率化を重視する顧問先もいれば、数字をもとに経営の相談をしたい顧問先もいるためです。

顧問先の特性ごとに、向いている手段を整理すると次のようになります。

顧問先の特性

求められていること

向いている手段

中心になるツール

個人事業主・小規模法人が中心

記帳や申告を効率よく進めたい

記帳・会計業務のクラウド化

クラウド会計ソフト

成長中の中小企業が中心

数字をもとに経営の相談をしたい

経営分析・可視化ツールの導入

経営分析ツール、予実管理機能

融資・資金調達の相談が多い

資金繰りや今後の見通しを確認したい

予算管理・将来予測ができるツールの導入

経営分析ツール、事業計画の作成支援

顧問先が遠方に分散している

手続きをオンラインで進めたい

コミュニケーション・契約のDX

電子契約、ビジネスチャット

記帳のクラウド化だけでは、顧問先から見たサービスの違いが伝わりにくい場合があるため、他の事務所との差を出したい場合は、経営分析や資金繰り支援に力を入れる方法があります。

経営分析ツールを使えば、グラフやレポートを見せながら、数字の変化や今後の見通しについて話せるようになります。記帳や申告に加えて経営支援にも力を入れたい事務所では、こうしたツールも検討するとよいでしょう。

税理士事務所がDXを進める具体的なステップ

税理士事務所のDXは、現状を整理し、取り組む業務を絞り込みながら少しずつ進めていくのが基本です。

目的の設定から導入後の検証、顧問先への展開まで、実践しやすい流れに沿って進め方を整理します。

  • 1.DXで実現したい姿と目的の決定

  • 2.現状の業務・ツールの棚卸し

  • 3.優先順位とスケジュールの設定

  • 4.セキュリティと運用ルールの設計

  • 5.スモールスタートでの導入と検証

  • 6.顧問先を巻き込んだ展開

1.DXで実現したい姿と目的の決定

最初に決めるべきなのは、導入するツールではなく、DXによってどのような状態を目指すのかです。業務時間を減らすことだけを目的にすると、導入後にどのような成果を目指すのかが曖昧になり、効果を振り返りにくくなります。

まずは、事務所内と顧問先の両方の視点から目的を整理してみましょう。

  • 所内向けの例:月次面談の準備時間を、顧問先1社あたり60分から20分に短縮する

  • 顧問先向けの例:すべての顧問先に、翌月10営業日以内に月次の数字を共有する

  • 経営支援の例:年1回の決算報告だけでなく、四半期ごとに今後の見通しを話す機会を設ける

目的を決めるときは、できるだけ数字や期限を入れることが大切です。「効率化する」「顧問先の満足度を上げる」だけでは、後から達成できたかを確認しにくくなります。

また、この段階から職員にも意見を聞いておくと、その後の取り組みを進めやすくなります。所長だけで決めるのではなく、実際に業務を行う職員と一緒に考えることが重要です。

2.現状の業務・ツールの棚卸し

次に、今どの業務にどれくらい時間がかかっているのか、どのツールを使っているのかを整理します。実際に書き出してみると、時間がかかっていると思っていた業務が、それほど大きな負担ではなかったと分かることもあります。

整理する項目は、次のとおりです。

  • 業務名(記帳、試算表作成、月次面談の準備、申告書作成など)

  • 担当者と、対応できる人数

  • 1か月あたりにかかる時間

  • 使用しているツールやソフト

  • 紙でのやり取りが残っている業務

  • 特定の職員しか対応できない業務

作業時間は、分単位で正確に測る必要はありません。1か月ほど記録し、おおよその時間が分かれば十分です。

一覧にすると、時間がかかっている業務や、紙での作業が多く残っている部分が見つけやすくなります。まずは、負担の大きい業務から見直していくとよいでしょう。

3.優先順位とスケジュールの設定

次に、効果が出やすい業務から順に取り組み、無理のないスケジュールを決めます。一度にすべてを変えようとせず、少しずつ進めることが大切です。

優先順位は、以下のように「発生する回数と作業時間」「変更しやすいかどうか」を基準にすると考えやすくなります。

  • 最優先:毎月発生し、時間もかかるうえ、事務所内だけで見直せる業務

  • 次に取り組む:毎月発生するものの、顧問先の協力が必要な業務

  • 後回し:年に1回程度の業務や、すぐには変更しにくい業務

スケジュールを決めるときは、繁忙期を避けることも重要です。確定申告や3月決算で忙しい時期に新しいツールを導入しても、使い方を覚える時間を取りにくくなります。

繁忙期が落ち着いた時期にひとつずつ取り組み、数か月ごとに見直していくくらいのペースであれば、通常業務と並行しながら進めやすくなります。

4.セキュリティと運用ルールの設計

顧問先の財務データを扱う以上、ツールの導入とあわせてセキュリティや運用ルールも決めておく必要があります。クラウドサービスを使う場合は、誰がどのデータにアクセスできるのかを明確にしておくことが大切です。

導入前に、少なくとも次の項目は決めておきましょう。

  • アクセス権限:担当する顧問先に応じて、閲覧できる範囲を設定する

  • 多要素認証:パスワード以外の認証も使う

  • バックアップ:どのデータを、どの頻度で保存するかを決める

  • ログ管理:誰がいつデータを確認・変更したか分かるようにする

  • 退職・担当変更時の対応:アカウント停止や権限変更の手順を決めておく

税理士には守秘義務があるため、顧問先の情報を適切に管理することは欠かせません。ツールを選ぶ際も、多要素認証や操作履歴の確認など、必要なセキュリティ機能があるかを確認しておきましょう。

運用ルールは、細かくしすぎる必要はありません。重要な内容を簡潔にまとめ、職員全員が確認できる状態にしておくことが大切です。

5.スモールスタートでの導入と検証

最初から全体に広げるのではなく、一部の業務や担当者で試し、効果を確認しながら広げていく方法がおすすめです。一度に導入すると、問題が起きたときに原因を見つけにくくなります。

まずは、次のような形で始めると進めやすいでしょう。

  • 顧問先を3〜5社ほどに絞る

  • 担当者は1〜2名にする

  • 3か月ほど使い、変化を記録する

面談準備にかかる時間や経営の話に使える時間、顧問先からの反応などを確認しましょう。

思うような効果が出なかった場合は、ツールそのものだけでなく、使い方や手順、元になるデータに問題がないかも確認します。

うまくいった方法が見つかったら、実際に使った担当者が、結果や注意点を事務所内で共有するとよいでしょう。現場で使った人の話は、他の職員にも伝わりやすくなります。

6.顧問先を巻き込んだ展開

事務所内でツールの使い方や運用が固まってきたら、顧問先にも少しずつ広げていきます。事務所内での利用経験が少ない段階では、顧問先からの質問にすぐ対応できない場合もあるため、まずは内部で使い方を確認しておくと安心です。

顧問先への取り組みとしては、次のようなものがあります。

  • クラウド会計の導入支援を有料サービスとして案内する

  • 領収書や請求書の受け渡しを、郵送からクラウド共有に切り替える

  • 経営分析ツールの画面を共有し、顧問先もいつでも数字を確認できるようにする

案内するときは、事務所側の都合ではなく、顧問先にどんなメリットがあるかを伝えることが大切です。「郵送の手間が減る」「月の途中でも数字を確認できる」といった具体的な利点を示すと、理解も得やすくなります。

ここまで進んだ後は、経営支援やクラウド導入支援まで含めてサービス内容を整理し、必要に応じて提案してみるのもよいでしょう。

税理士事務所のDXなら「metrics」

ここまで見てきたように、税理士事務所のDXは、記帳や申告の効率化だけでなく、顧問先への経営支援にもつなげていくことが大切です。経営分析まで含めて取り組みたい場合は、当社が開発・運営するmetricsもご検討ください。

metricsは、会計データを分かりやすく整理し、経営判断に必要な情報を確認できるクラウド経営分析ツールです。全国の税理士法人や会計事務所のほか、BPO事業を行う企業でも利用されています。

2026年のアップデートではAI機能が強化され、AI CFOとのやり取りを通じて、予算管理やダッシュボードの作成も行えるようになりました。主な特徴は次の4つです。

  • 見やすいダッシュボードでスマートな経営支援を実現

  • 予算管理と将来予測で未来に繋がる経営を支援

  • AIが経営データを読み解き意思決定をサポート

  • ストレスフリーな初期設定と自動API連携

見やすいダッシュボードでスマートな経営支援を実現

顧問先ごとに、確認したい数字をまとめたダッシュボードを作成できます。一度設定すれば会計ソフトの更新内容が反映されるため、毎月Excelでレポートを作り直す手間を減らせます。

ダッシュボードでは、数字を一覧で確認するだけでなく、損益分岐点グラフなどを使って、売上や利益の動きを分かりやすく確認できるでしょう。

気になる数字はその場で仕訳まで確認できるため、面談後にあらためて調べる手間も減らせます。

予算管理と将来予測で未来に繋がる経営を支援

数字を入力すると損益の見込みが更新されるため、経営者と同じ画面を見ながら来期の計画を考えられます。

細かな予算を作る時間が取れない顧問先には、「自動予測」モードも利用できます。個別に予算を設定しなくても、過去の実績をもとに期末の見込みを算出できるため、少ない手間で今後の数字を確認できるでしょう。

作成した予算と自動予測はダッシュボード上で切り替えて確認でき、現在の実績と今後の見込みを比べながら、設備投資や採用などについて数字をもとに話し合えます。

AIが経営データを読み解き意思決定をサポート

metricsには、経営データの分析やダッシュボードの作成、予算案の作成を支援するAIエージェント「AI CFO」が搭載されています。資料の内容を確認し、気になる数値や確認したい内容を整理する際にも活用できる点も特徴です。

AIを使って確認すべき点を整理することで、経験が豊富でないスタッフでも分析や面談準備を進めやすくなります。

また、顧問先ごとの確認方法や業種ごとのチェック項目をナレッジとして登録しておけば、担当者が変わった場合も情報を引き継ぎやすくなります。特定の担当者だけに知識が偏るのを防ぎ、事務所内で一定の品質を保ちやすくなる点もメリットです。

実際の操作画面は、次のYouTube動画でも確認できます。

metrics AI CFO 機能紹介プレイリスト|YouTube

ストレスフリーな初期設定と自動API連携

freeeマネーフォワードとAPI連携でき、連携を許可すると、仕訳や帳票の取り込み、勘定科目の設定まで自動で行われます。

初回の連携では過去分を含む各期のデータをまとめて取得できるため、顧問先ごとにデータを手作業で整える手間を減らせるでしょう。新しく契約した顧問先でも、連携後すぐにダッシュボードを使い始められます。

データは定期的に自動更新されるため、面談のたびに会計ソフトから最新の数字を取り込み直す必要もありません。顧問先ごとのデータ更新にかかる作業を減らせる点もメリットです。

DXの手段として経営分析ツールを検討している方は、まず無料デモで実際の画面に触れてみてください。

リンクをクリックすると日程調整ページが開きます。ご都合のよい日時を選んで、ご予約ください。

税理士事務所へのmetrics導入事例

metricsは、税理士事務所ごとの課題や目指す支援内容に合わせて活用されています。

ここでは、業務の効率化や経営支援の充実につながった4つの導入事例を紹介します。

  • 伊藤会計事務所|属人化していた面談準備を定型化し、新人でも同じ品質の報告へ

  • エンジョイント税理士法人|試算表中心の報告会から、未来を話し合う場へ

  • スタートアップ税理士法人|コストと見られていた経理代行を、投資と呼べる支援へ

  • みらいと税理士法人|レポート作成の工数を削り、経営者との対話を能動的に

伊藤会計事務所|属人化していた面談準備を定型化し、新人でも同じ品質の報告へ

項目

内容

抱えていた課題

面談準備の内容や時間が担当者によって異なり、進め方が統一されていなかった

metricsによる解決策

面談前にmetricsのウィジェットを確認する手順を決め、準備の流れを統一した

効果

面談準備の時間を減らし、担当者による報告内容のばらつきを抑えられた

伊藤会計事務所様では、顧客との面談準備を担当者ごとに進めており、確認する内容や準備にかかる時間に差がありました。特に経験が比較的浅いスタッフは、何を確認すべきか判断するのに時間がかかることもありました。

そこで、面談前に「metricsで作成したウィジェットを確認する」という手順を決め、準備の進め方を統一しました。必要な情報を同じ流れで確認できるようになり、準備時間の短縮と報告内容のばらつきの軽減につながっています。

担当者が変わった場合も、これまで使っていたウィジェットを引き継げるため、引き継ぎを進めやすくなりました。経験に左右されにくい形で面談準備を行えるようになった点も、大きなメリットです。

エンジョイント税理士法人|試算表中心の報告会から、未来を話し合う場へ

項目

内容

抱えていた課題

試算表を中心に説明していたため、経験が比較的浅いメンバーほど過去から現在までの報告に時間がかかっていた

metricsによる解決策

報告時に使うウィジェットを全社で統一し、担当者によるばらつきを減らした

効果

過去の報告だけで終わらず、今後の経営について話す時間を増やせた

エンジョイント税理士法人様では、クライアントとの面談で、過去や現在の数字を確認するだけでなく、今後の経営について話すことを大切にしていました。一方、試算表を中心とした報告では、経験が比較的浅いメンバーは数字の説明に時間がかかり、将来の話まで十分にできないことが課題でした。

そこで、報告時に使うmetricsのウィジェットを全社で統一し、誰が担当しても同じ流れで説明できるようにしました。あわせて、日々の業務でもmetricsでの報告を意識して、必要な情報を整理するようにしています。

数字をグラフや指標で確認できるようになったことで、経験の浅いメンバーでも重要なポイントを伝えやすくなりました。その結果、過去の数字を説明するだけでなく、経営上の課題や今後の方針について話す面談が増えています。

スタートアップ税理士法人|コストと見られていた経理代行を、投資と呼べる支援へ

項目

内容

抱えていた課題

試算表を渡すだけでは、経営者が数字を経営や資金調達にどう生かせばよいか分かりにくかった

metricsによる解決策

freeeの部門・品目・取引先などの情報を連携し、入力した内容がレポートに反映されるようにした

効果

面談準備がしやすくなり、経営や資金調達の提案により多くの時間を使えるようになった

スタートアップ税理士法人様では、経理代行の価値を経営者に十分伝えにくいことが課題でした。試算表を渡すだけでは、その数字を経営や資金調達にどう生かせばよいか分かりにくく、経理代行が単なるコストとして見られることもありました。

metricsの導入後は、freeeの部門・品目・取引先などの情報を連携し、会計ソフトに入力した内容がレポートへ反映されるようになりました。最新の数字をグラフや指標で確認できるため、経営者への説明にもそのまま活用しやすくなっています。

また、面談に必要な数字をレポート上で確認できるようになり、面談のために別途資料を作成したり、数字を整理したりする負担も軽減されました。その結果、面談では数字の報告にとどまらず、経営方針や資金調達について話す機会も増えています。

実際に大規模な資金調達につながった事例もあり、税理士や社労士などグループ内で数字を共有しながら、連携して支援できるようになっています。

みらいと税理士法人|レポート作成の工数を削り、経営者との対話を能動的に

項目

内容

抱えていた課題

1社あたり1〜2時間、月次で最大30時間を財務分析やレポート作成に使っており、担当者によって内容にも差があった

metricsによる解決策

会計ソフトとのAPI連携でデータ更新を自動化し、ウィジェットの統一とAI CFOを活用した

効果

レポート作成が1〜2時間から約3分に短縮され、経営について話す時間を増やせた

みらいと税理士法人様では、財務分析やレポート作成に時間がかかることに加え、担当者によって内容に差が出ることも課題でした。1社あたり1〜2時間、月次では最大30時間を使っており、業種に合わせた分析ができるかどうかも担当者の経験に左右されていました。

そこで、会計ソフトとのAPI連携でデータの取得・更新を自動化し、報告に使うウィジェットも統一しました。さらに、AI CFOを使って「なぜこの数字が下がっているのか」といった点を確認できるようにし、分析や報告の準備を進めやすくしています。

その結果、レポート作成にかかる時間は1〜2時間から約3分まで短縮されました。「人をもう一人雇った場合、利益はどう変わるか」といった今後の経営について話す機会も増え、支援中の5社すべてが過去最高売上を更新しました。対応できる顧問先についても、5社から10社程度まで増やせる見通しが立っています。

まとめ

本記事では、税理士事務所におけるDXの意味や背景、課題、進め方について解説しました。

税理士事務所のDXは、紙をデータに置き換えるだけではありません。記帳や申告を効率化し、そこで生まれた時間を顧問先への経営支援に使うところまで含めて考えることが大切です。

また、クラウド会計の普及や電子帳簿保存法、インボイス制度への対応など、事務所を取り巻く環境も変わっています。一方で、IT人材の不足や紙での業務、費用対効果の分かりにくさなど、進めるうえでの課題もあります。

DXの方法は、書籍・セミナー、外部支援、内製、専用ツールの4つです。どれかひとつに絞るのではなく、事務所の規模や予算、人材、顧問先のニーズに合わせて組み合わせるとよいでしょう。

進める際は、まず目的と現状を整理し、効果が出やすい業務から少しずつ試すことが重要です。セキュリティや運用ルールも決めたうえで、うまくいった方法を事務所内や顧問先へ広げていきましょう。

まずは、月次報告など日常業務にどれくらい時間がかかっているかを記録してみてください。今の負担が分かれば、どこから見直すべきか判断しやすくなります。

「顧問先から届く紙の領収書を毎月手入力するのに時間がかかっている」「記帳や申告業務に追われ経営分析や相談対応まで手が回らない」こうした課題を持つ税理士の方は少なくありません。

このような状況が続くと、目の前の業務で手いっぱいになり、新しい顧問先を受け入れたり、今いる顧問先へのサポートを充実させたりすることが難しくなります。

税理士事務所のDXは、ソフトを入れて作業を速くするだけの取り組みではなく、顧問先にどのような価値を届けるかまで含めて見直す取り組みです。

まずは何のために進めるのかを決め、自事務所の規模や人材に合った手段から始めることが大切になります。

本記事では、DXとIT化の違い、DXが求められる背景、推進時によくある課題、4つの手段と選び方、実際に進めるためのステップまで解説します。DXに取り組みたいものの、何から手をつけるべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

経営支援ツールで税理士事務所のDXを支援

metricsは、税理士・中小企業向けのクラウド経営分析ツールです。
freeeやマネーフォワードとのAPI連携で財務データを自動取得し、月次レポートの作成や経営報告をスムーズにします。
自事務所に合ったDXを進めたい方や、日々の業務を効率化しながら顧問先への経営支援により力を入れたい方は、こちらをご覧ください。

税理士事務所におけるDXとは

税理士事務所におけるDXとは、記帳や申告をデジタル化するだけでなく、業務の進め方や顧問先への提供価値まで見直す取り組みです。

経済産業省は「デジタルガバナンス・コード3.0」で、DXを次のように定義しています。

DXの定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

引用・参照:「デジタルガバナンス・コード3.0〜DX経営による企業価値向上に向けて〜」経済産業省

税理士事務所のDXは記帳代行や申告業務を効率化し、クラウド会計などを活用して日々の作業を減らし、顧問先の数字をより早く確認できるようにすることも含まれます。

さらに、そこで生まれた時間や集まったデータを使うことで、資金繰りや業績の変化を早めに伝えるなど、経営の相談にも対応しやすくなります。職員一人ひとりが単純作業に追われにくくなり、より専門性の高い業務に時間を使えるようになるでしょう。

DXとIT化の違い

IT化が「今ある業務をデジタルに置き換えること」であるのに対し、DXは「デジタル技術を使って、仕事の進め方や顧問先への支援の形まで変えていくこと」を指します。

たとえば、紙の請求書をPDFにする、押印を電子印鑑に変えるといった取り組みはIT化にあたります。両者の違いを整理すると、以下のとおりです。

項目

IT化

DX

目的

今ある業務を効率化する

仕事の進め方や顧問先への支援を見直す

対象

ひとつひとつの作業やツール

事務所全体の業務や働き方

税理士事務所での例

紙の請求書をPDF化する、試算表をメールで送る

顧問先と数字を共有し、月次面談で経営について話す

考え方

業務を改善するための手段

事務所の仕事のあり方を変える取り組み

成果の見方

作業時間がどれだけ減ったか

顧問先への支援や事務所の強みがどう変わったか

経済産業省が中堅・中小企業向けにまとめた手引きでも、DXは単に業務をデジタル化することとは分けて説明されています。まずIT化で日々の業務を効率化し、その先で仕事の進め方や顧問先への支援を見直していく、と考えるとわかりやすいでしょう。

たとえば、資料のデータ化や電子申告から始め、そこでできた時間を経営相談や提案に使う方法があります。このように段階を踏めば、人数の少ない事務所でも取り組みやすくなります。

引用・参照:「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き」経済産業省

税理士事務所にDXが求められる背景

税理士事務所にDXが求められている背景には、顧問先のクラウド会計の利用拡大や税理士の高齢化、制度の変更などがあります。

これまでの仕事の進め方では対応しにくい場面も増えており、事務所側にもデジタルを活用した見直しが求められています。

  • 顧問先側の変化(会計のクラウド化・電子化ニーズ)

  • 税理士の高齢化と事業承継・業務継続への対応

  • 制度面の変化(電子帳簿保存法・インボイス制度への対応)

顧問先側の変化(会計のクラウド化・電子化ニーズ)

顧問先である個人事業主や中小企業では、クラウド会計の利用が広がっています。背景には、行政手続きのデジタル化やインボイス制度などがあり、請求書や帳簿をオンラインで扱う機会も増えているでしょう。

MM総研の調査からも、個人事業主の間で会計ソフトが一定程度、利用されていることがわかります。

クラウド会計ソフトの利用状況調査(2026年3月末)
本調査では2025年(令和7年)分の確定申告を実施した個人事業主(15,845事業者)を対象とした。調査結果によると、会計ソフトを利用している個人事業主は40.9%となった。

引用・参照:「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2026年3月末)」MM総研

会計データをオンラインで確認する機会が増えるなか、税理士事務所でも、紙を前提としない情報共有や対応が必要になる場面が増えると考えられます。

こうした変化は、税理士事務所にとっても、顧問先とのやり取りや資料の受け取り方を見直すきっかけになるでしょう。顧問先の変化に合わせて、事務所側も仕事の進め方を見直していく必要があります。

税理士の高齢化と事業承継・業務継続への対応

税理士の高齢化が進むなか、限られた人数でも事務所の業務を続けられる体制づくりが必要になっています。日本税理士会連合会の調査では、60歳代以上の税理士が53.6%を占め、20〜30歳代は6.6%にとどまっていました。

引用・参照:「税理士実態調査 税理士の5割超が60歳以上 開業税理士は6割超える」会計事務所の広場

若い世代の担い手が少ない状況では、人を増やすだけで対応するのが難しい事務所もあるでしょう。そのため、日々の作業を減らすだけでなく、担当者が変わっても仕事を引き継ぎやすい状態にしておくことが大切です。

紙の資料や担当者ごとの管理が中心になっている場合、担当替えや事業承継の際に、確認や引き継ぎに時間がかかることがあります。顧問先のデータや業務の進め方をデジタルで共有しておけば、担当者が変わった場合でもスムーズに業務を進めやすくなるでしょう。

制度面の変化(電子帳簿保存法・インボイス制度への対応)

電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も、税理士事務所にDXが求められる背景です。2つの制度は目的が異なりますが、いずれも請求書や取引データを適切に保存・管理するための対応が求められます。

特に、メールやWebサービスを通じて請求書や領収書などを電子データで受け取る機会が増えるなか、税理士事務所が保存方法や対応について相談を受けることもあるでしょう。

電子帳簿保存法第7条では、電子取引に関するデータの保存について、次のように定められています。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第七条
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

引用・参照:「第七条 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」e-GOV 法令検索

また、インボイス制度では、仕入税額控除を受けるための要件として、帳簿と適格請求書等の保存が求められます。

No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)
適格請求書等保存方式の下では、一定の事項が記載された帳簿及び「適格請求書(インボイス)」等の保存が仕入税額控除の要件となります。

引用・参照:「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」国税庁

こうした制度に適切に対応するためには、顧問先から受け取ったデータをどこに保存するのか、誰が確認するのか、どのように会計処理へつなげるのかといった事務所内のルールを整えておくことが重要です。

税理士事務所のDX推進でよくある課題

税理士事務所でDXを進めようとしても、人材やこれまでの仕事の進め方、費用などが課題になり、思うように進まないこともあるでしょう。

ここでは、DXを進める際に多くの事務所が直面しやすい3つの課題を紹介します。

  • IT人材の不足とリテラシー格差

  • 紙文化からの脱却の難しさ

  • コスト・投資対効果の見えづらさ

IT人材の不足とリテラシー格差

税理士事務所がDXを進めるうえでは、ITに詳しい人材の不足と、職員ごとのスキル差への対応が大きな課題になります。

中小企業基盤整備機構の調査によると、DXに取り組むにあたっての課題の上位は人と予算に関する項目が並びました。

DXに取組むに当たっての課題
・ITに関わる人材が足りない:28.3%
・予算の確保が難しい:26.0%
・DX推進に関わる人材が足りない:25.6%

引用・参照:「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」中小企業基盤整備機構

数名から数十名ほどの事務所では、IT専任の職員を置くのが難しく、パソコンやシステムに詳しい職員が、通常業務の合間に対応しているケースも少なくありません。

また、設定や使い方が特定の職員に偏っていると、異動や退職の際に業務の引き継ぎが難しくなることがあるでしょう。

そのため、導入時の手順や設定内容、日々の運用方法を記録に残し、複数の職員が対応できるようにしておくことが重要です。

紙文化からの脱却の難しさ

税理士事務所のDXでは、事務所内だけでなく、顧問先との資料のやり取りまで含めて紙を減らしていく必要があります。

中小企業基盤整備機構の調査では、DXに既に取り組んでいる、または取り組みを検討している企業の具体的な取り組み内容として、「文書の電子化・ペーパーレス化」が55.8%で最も多くなりました。2位の「営業活動・会議のオンライン化」は37.1%で、大きな差があります。

DXの具体的な取組み内容
・文書の電子化・ペーパーレス化:55.8%
・営業活動・会議のオンライン化:37.1%

引用・参照:「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」中小企業基盤整備機構

紙の試算表を希望する顧問先もいるため、事務所側だけで一律にデジタル化を進めるのが難しい場合もあります。

そのため、事務所内の見直しだけでなく、顧問先の希望や対応状況も確認しながら、資料の提出方法を少しずつ見直していくとよいでしょう。

すべての顧問先で一斉に切り替えるのではなく、クラウド会計を利用している顧問先など、対応しやすいところから進めましょう。

コスト・投資対効果の見えづらさ

DXを進めるには、導入費用だけでなく、どれくらい効果が見込めるかを事前に把握しておくことが大切です。

中小企業基盤整備機構の調査によると、DXに取り組む予定がない理由として、効果の見えにくさや予算不足、必要性を感じていないことが挙げられています。

DXに取組む予定のない理由
・具体的な効果や成果が見えない:25.7%
・予算が不足している:20.6%
・自社の企業規模、業務内容を鑑み、DXが必要と思われない:18.1%

月額数万円のツールでも、どれだけ作業時間を減らせるのかが分からなければ、導入すべきか判断しづらくなります。

そこで、1社あたりの作業時間を記録し、時間単価を掛けてコストを算出します。その金額とツールの導入費用を比べることで、費用対効果を確認できるようになるでしょう。

具体的な数字に置き換えることで、導入するかどうかを感覚だけでなく、費用と効果を比べながら判断しやすくなります。

税理士事務所がDXを進める4つの手段

税理士事務所のDXは、ツール導入や外部支援、事務所内での取り組みなど、さまざまな方法で進められます。

どれかひとつに絞るのではなく、事務所の課題や状況に応じて複数の方法を組み合わせることが大切です。

  • 書籍・セミナーで学ぶ

  • 外部の支援会社・コンサルタントに依頼する

  • 自分たちで内製する

  • 専用ツールを導入する

書籍・セミナーで学ぶ

費用を抑えながら、DXの進め方を知りたい場合は、書籍やセミナーから始める方法があります。全体の流れや、つまずきやすいポイントを事前に把握できるのがメリットです。

主なメリットは、次のとおりです。

  • 数千円程度から始められる

  • 所内でDXについて話しやすくなる

  • 他事務所の事例や失敗例を参考にできる

会計事務所のDXを扱った書籍としては、「会計事務所のDXの進め方」があります。

『会計事務所のDXの進め方』
・著者:朝倉歩、宮川大介
・出版社:中央経済グループパブリッシング
・発売日:2024/10/10

DXを始める理由から準備、事務所ごとの進め方、顧客管理や社内業務、AI活用まで幅広く扱っています。現状分析シートなどの付録もあり、実際の業務を見直す際にも使いやすい内容です。

セミナーでは、税理士会の研修や会計ソフト会社が開催する無料セミナーなどがあります。実際の導入事例を聞けることも多いため、運用のイメージをつかみたい場合にも役立つでしょう。

外部の支援会社・コンサルタントに依頼する

事務所内だけでDXを進めるのが難しい場合は、外部の支援会社やコンサルタントに相談する方法があります。現状の整理から計画づくり、ツール選びまで一緒に進めてもらえるため、何から始めればよいか分からない場合にも役立つでしょう。

中小企業基盤整備機構の調査でも、以下のようにDXを進めるために外部の支援を求める声が見られます。

DXの推進に向けて期待する支援策
・補助金・助成金:43.9%
・中小企業のためのDX推進指針の策定・公表:21.0%
・研修制度:16.0%
・専門家の派遣:15.7%
・公的支援機関や専門家による経営相談:10.9%

引用・参照:「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」中小企業基盤整備機構

外部に依頼すると、現状整理や計画づくりを任せられ、事務所内の調査や比較にかかる時間を減らせます。
一方で、依頼内容によっては費用がかかるほか、支援終了後も運用を続けられる体制づくりが必要です。

依頼先を選ぶときは、税理士事務所や士業の支援実績があるか、特定のツールの導入だけを勧める会社ではないかを確認しておくと安心でしょう。

自分たちで内製する

自分たちでDXを進める場合は、Excelなどの既存ツールを活用するほか、生成AIを使って業務ツールや自動化の仕組みを作る方法もあります。

内製は事務所の業務に合わせて自由に作れる一方、特定の職員に知識や管理が偏りやすいため、属人化を防ぐ工夫も必要です。

既存の汎用ツールを使いこなす(Excel・無料ツール等)

新しいツールを導入しなくても、ExcelやGoogleスプレッドシート、無料の公的ツールを使って改善できる業務は多くあります。

Googleスプレッドシートには、プロジェクト管理やタスク管理のテンプレートが用意されているため、次のような管理にも活用できます。

  • 顧問先ごとの申告期限や進捗の管理

  • 担当者ごとの月次面談スケジュール

  • 資料の回収状況のチェック

複数人で同時に編集でき、変更履歴も確認できるため、ファイルをメールで送り合う必要がありません。どのファイルが最新版か分からなくなるといった手間も減らせるようになるでしょう。

無料で使える公的ツールには、中小企業基盤整備機構の「経営自己診断システム」があります。

引用・参照:「経営自己診断システム」独立行政法人 中小企業基盤整備機構

決算書の数値を入力すると、自社の財務状況や同業種の中小企業との比較、経営危険度などを確認できます。

まずはこうしたツールを使いながら、数字をもとに説明する機会を増やしていくのもよいでしょう。

生成AIを活用して業務ツールや自動化フローを内製する

ChatGPTなどの生成AIが広まり、プログラミングの知識が豊富になくても、業務に使う簡単なツールや自動化の仕組みを作りやすくなりました。

たとえば税理士事務所では、次のような使い方があります。

  • スプレッドシートの関数やGoogle Apps Scriptを作成し、集計や通知を自動化する

  • 面談の録音データから議事録の下書きを作る

  • 業種別のチェックリストや顧問先向けの説明文を作る

  • 試算表の数値をもとに、確認が必要な点を整理する

一方で、顧問先の決算データや個人情報を生成AIに入力する場合は注意が必要です。利用するサービスの設定やデータの扱いを確認したうえで、どの情報まで入力してよいかを事務所内で決めておく必要があります。

AIをどの業務にどう取り入れるかを詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

経営管理にAI(AIエージェント)を活用する方法とは?具体的な業務や活用事例を解説

また、財務分析での使い方や、ツール・プロンプトについて知りたい場合は、こちらの記事も参考になります。

財務分析をAIで実施する方法とは?ツールやプロンプト、最新のAI活用法まで解説

専用ツールを導入する

専用ツールを導入すれば、記帳や会計業務だけでなく、経営分析や顧問先とのやり取り、バックオフィス業務まで幅広く効率化できます。

事務所の課題に合ったツールを選び、必要に応じて複数を組み合わせることが大切です。

記帳・会計業務のクラウド化ツール

記帳や会計業務をクラウド化することは、税理士事務所のDXを進めるうえで基本となる取り組みです。紙やインストール型のソフトを中心に使っていると、データ共有や分析など、その先の業務改善にもつなげにくくなることもあるでしょう。

代表的なサービスには、次の3つがあります。

ツール

主な特徴

freee会計

銀行口座やクレジットカードなどと連携し、明細の自動取得や取引登録を効率化

マネーフォワード クラウド会計

2,300以上の金融関連サービスと連携し、部門・案件別の損益分析にも対応

弥生

MM総研の2026年3月調査で、個人事業主向けクラウド会計ソフトの事業者別シェア54.0%で首位

たとえばfreee会計では、スマートフォンで撮影した領収書や請求書を取り込み、AI-OCRでインボイス情報を読み取ったり、電子帳簿保存法で必要となる取引先・日付・金額などを推測入力したりできます。

引用・参照:「【Android】会計アプリでレシート類をスマホのカメラで取り込む」ヘルプセンター

実際には、顧問先がすでに使っている会計ソフトを導入することもあります。主要なサービスを一通り扱えるようにしておくと、顧問先ごとの状況に合わせて提案しやすくなります。

経営分析・可視化を担うAIツール

記帳や会計業務をクラウド化した後は、集まったデータを経営にどう生かすかが次の課題です。

経営分析ツールを使うと、会計データをグラフや指標で確認でき、顧問先への説明にも活用できます。導入することで、次のような使い方ができます。

  • 売上や利益、資金の動きをグラフで分かりやすく伝える

  • 気になる数字をその場で確認し、面談中の質問に答える

  • 予算や今後の見込みを示し、これからの経営について話し合う

当社が開発・運営するmetricsも、こうした経営分析を支援するクラウドツールです。

会計データを分かりやすく表示し、経営判断に必要な情報を確認できます。freeeやマネーフォワードとAPI連携できるため、顧問先ごとにデータを手作業で準備する手間も抑えられるでしょう。

搭載されている「AI CFO」では、確認したい指標を伝えるとAIが自動でダッシュボードを作成します。また、「来期は売上を20%伸ばしたい」といった方針をもとに、予算案の作成を支援することも可能です。

顧問先とのコミュニケーション・契約DXツール

事務所内の業務を効率化しても、顧問先とのやり取りが紙や郵送のままだと、手続きに時間がかかります。契約や資料の受け渡しをデジタル化することで、顧問契約の締結や日々のやり取りをスムーズにできるでしょう。

たとえば、次のようなツールがあります。

  • 電子契約クラウドサインfreeeサインを使って、顧問契約書や業務委託契約書をオンラインで締結する

  • ビジネスチャットChatworkSlackを使って、日々の質問や連絡を行う

  • ファイル共有・顧問先ポータルMyKomonなどを使って、証憑や決算資料を顧問先と決まった場所で共有・保管する

電子契約サービス「クラウドサイン」では、紙の契約書や押印を使わず、契約手続きをオンラインで完結できます。

引用・参照:「クラウドサインの基本機能」クラウドサイン

契約書を郵送し、返送を待つ必要がなくなるため、遠方の顧問先とも契約を進めやすくなります。紙の契約書にかかる印紙代を抑えられる点もメリットです。

バックオフィス全般の業務効率化ツール

給与計算や勤怠管理、定型的な入力作業をツールで効率化することで、事務所内の負担を減らせます。

代表的なものは、次のとおりです。

たとえば「ジョブカン勤怠管理」は、出勤管理・シフト管理・休暇申請など、必要な機能を組み合わせて使えるクラウドサービスです。シリーズ累計で30万社以上に導入されており、有料利用ユーザー数は300万を超えています。

引用・参照:「機能」ジョブカン勤怠管理

こうしたツールを事務所内で実際に使っておくと、顧問先にも具体的に提案しやすくなります。まずは自事務所で試し、使いやすさや注意点を確認してから勧めるとよいでしょう。

自事務所に合うDX推進手段の選び方

DXの推進手段を選ぶ際は、機能や費用だけでなく、自事務所の体制や顧問先との関係性まで含めて検討することが大切です。

事務所の規模・予算、ITリテラシーや人材、顧問先に提供したい価値という3つの観点でそれぞれ解説します。

  • 事務所の規模・予算で選ぶ

  • ITリテラシー・社内人材で選ぶ

  • 顧問先の特性・提供したい価値で選ぶ

事務所の規模・予算で選ぶ

事務所の規模によって、DXにかけられる費用や導入後の運用体制は異なります。

小規模な事務所では、まずは低コストのツールから始め、必要に応じて専用ツールや外部支援を取り入れる方法が良いでしょう。

一方、中・大規模な事務所では、職員数や顧問先数が多く、同じ作業を繰り返す場面も増えるため、専用ツールで業務の進め方をそろえることで、事務所全体の作業時間を減らしやすくなります。

事務所の規模ごとの目安は、次のとおりです。

事務所の規模

予算の目安

向いている手段

最初に取り組むこと

所長1人〜3名

月に数千円〜1万円台

書籍・セミナー+汎用ツール

書籍で基本を学び、スプレッドシートで進捗管理を始める

4〜10名

月に1〜5万円程度

専用ツールの導入

会計ソフトをクラウド化し、必要に応じて経営分析ツールも導入する

11名以上

月に5万円以上+必要に応じて外部委託

専用ツール+外部の支援

外部の支援も受けながら業務を見直し、事務所内のルールを整える

予算を一度に確保するのが難しい場合は、段階的に進めても問題ありません。まずは会計ソフトのクラウド化から始め、どれだけ作業時間を減らせたかを確認してから、次のツールを検討すると無理なく進められます。

また、IT導入補助金など、ツールの導入費用の一部を補助する制度もあります。要件や対象ツールは年度によって変わるため、利用を検討する際は最新の公募要領を確認してください。

ITリテラシー・社内人材で選ぶ

事務所内にITに詳しく、DXを進められる職員がいるかどうかで、内製が向いているかは大きく変わります。必要なのは高度なプログラミング知識よりも、今の業務を整理し、手順を分かりやすくまとめられる力です。

事務所の状況に合わせると、次のように考えられます。

所内の状況

内製の向き不向き

向いている手段

気をつけたい点

ツールに詳しい職員がいて、対応する時間もある

向いている

内製+汎用ツール、生成AIの活用

設定や手順を記録し、複数人が対応できるようにする

詳しい職員はいるが、通常業務で手いっぱい

一部は向いている

専用ツールを中心に、簡単な自動化だけ内製

設定や管理に手間がかかりすぎないツールを選ぶ

詳しい職員がいない

向いていない

専用ツール+外部の支援

導入支援やサポートの内容を確認して選ぶ

ITに詳しい職員がいなくても、DXを進めることはできます。会計ソフトとの連携や初期設定が簡単なツールを選べば、事務所側の負担を抑えながら導入できるでしょう。

人手に余裕がない事務所では、無理に内製するよりも、すでにあるツールや外部の支援を活用するほうが進めやすい場合もあります。

顧問先の特性・提供したい価値で選ぶ

顧問先が求めていることによって、選ぶべきツールや進め方も変わります。記帳や申告の効率化を重視する顧問先もいれば、数字をもとに経営の相談をしたい顧問先もいるためです。

顧問先の特性ごとに、向いている手段を整理すると次のようになります。

顧問先の特性

求められていること

向いている手段

中心になるツール

個人事業主・小規模法人が中心

記帳や申告を効率よく進めたい

記帳・会計業務のクラウド化

クラウド会計ソフト

成長中の中小企業が中心

数字をもとに経営の相談をしたい

経営分析・可視化ツールの導入

経営分析ツール、予実管理機能

融資・資金調達の相談が多い

資金繰りや今後の見通しを確認したい

予算管理・将来予測ができるツールの導入

経営分析ツール、事業計画の作成支援

顧問先が遠方に分散している

手続きをオンラインで進めたい

コミュニケーション・契約のDX

電子契約、ビジネスチャット

記帳のクラウド化だけでは、顧問先から見たサービスの違いが伝わりにくい場合があるため、他の事務所との差を出したい場合は、経営分析や資金繰り支援に力を入れる方法があります。

経営分析ツールを使えば、グラフやレポートを見せながら、数字の変化や今後の見通しについて話せるようになります。記帳や申告に加えて経営支援にも力を入れたい事務所では、こうしたツールも検討するとよいでしょう。

税理士事務所がDXを進める具体的なステップ

税理士事務所のDXは、現状を整理し、取り組む業務を絞り込みながら少しずつ進めていくのが基本です。

目的の設定から導入後の検証、顧問先への展開まで、実践しやすい流れに沿って進め方を整理します。

  • 1.DXで実現したい姿と目的の決定

  • 2.現状の業務・ツールの棚卸し

  • 3.優先順位とスケジュールの設定

  • 4.セキュリティと運用ルールの設計

  • 5.スモールスタートでの導入と検証

  • 6.顧問先を巻き込んだ展開

1.DXで実現したい姿と目的の決定

最初に決めるべきなのは、導入するツールではなく、DXによってどのような状態を目指すのかです。業務時間を減らすことだけを目的にすると、導入後にどのような成果を目指すのかが曖昧になり、効果を振り返りにくくなります。

まずは、事務所内と顧問先の両方の視点から目的を整理してみましょう。

  • 所内向けの例:月次面談の準備時間を、顧問先1社あたり60分から20分に短縮する

  • 顧問先向けの例:すべての顧問先に、翌月10営業日以内に月次の数字を共有する

  • 経営支援の例:年1回の決算報告だけでなく、四半期ごとに今後の見通しを話す機会を設ける

目的を決めるときは、できるだけ数字や期限を入れることが大切です。「効率化する」「顧問先の満足度を上げる」だけでは、後から達成できたかを確認しにくくなります。

また、この段階から職員にも意見を聞いておくと、その後の取り組みを進めやすくなります。所長だけで決めるのではなく、実際に業務を行う職員と一緒に考えることが重要です。

2.現状の業務・ツールの棚卸し

次に、今どの業務にどれくらい時間がかかっているのか、どのツールを使っているのかを整理します。実際に書き出してみると、時間がかかっていると思っていた業務が、それほど大きな負担ではなかったと分かることもあります。

整理する項目は、次のとおりです。

  • 業務名(記帳、試算表作成、月次面談の準備、申告書作成など)

  • 担当者と、対応できる人数

  • 1か月あたりにかかる時間

  • 使用しているツールやソフト

  • 紙でのやり取りが残っている業務

  • 特定の職員しか対応できない業務

作業時間は、分単位で正確に測る必要はありません。1か月ほど記録し、おおよその時間が分かれば十分です。

一覧にすると、時間がかかっている業務や、紙での作業が多く残っている部分が見つけやすくなります。まずは、負担の大きい業務から見直していくとよいでしょう。

3.優先順位とスケジュールの設定

次に、効果が出やすい業務から順に取り組み、無理のないスケジュールを決めます。一度にすべてを変えようとせず、少しずつ進めることが大切です。

優先順位は、以下のように「発生する回数と作業時間」「変更しやすいかどうか」を基準にすると考えやすくなります。

  • 最優先:毎月発生し、時間もかかるうえ、事務所内だけで見直せる業務

  • 次に取り組む:毎月発生するものの、顧問先の協力が必要な業務

  • 後回し:年に1回程度の業務や、すぐには変更しにくい業務

スケジュールを決めるときは、繁忙期を避けることも重要です。確定申告や3月決算で忙しい時期に新しいツールを導入しても、使い方を覚える時間を取りにくくなります。

繁忙期が落ち着いた時期にひとつずつ取り組み、数か月ごとに見直していくくらいのペースであれば、通常業務と並行しながら進めやすくなります。

4.セキュリティと運用ルールの設計

顧問先の財務データを扱う以上、ツールの導入とあわせてセキュリティや運用ルールも決めておく必要があります。クラウドサービスを使う場合は、誰がどのデータにアクセスできるのかを明確にしておくことが大切です。

導入前に、少なくとも次の項目は決めておきましょう。

  • アクセス権限:担当する顧問先に応じて、閲覧できる範囲を設定する

  • 多要素認証:パスワード以外の認証も使う

  • バックアップ:どのデータを、どの頻度で保存するかを決める

  • ログ管理:誰がいつデータを確認・変更したか分かるようにする

  • 退職・担当変更時の対応:アカウント停止や権限変更の手順を決めておく

税理士には守秘義務があるため、顧問先の情報を適切に管理することは欠かせません。ツールを選ぶ際も、多要素認証や操作履歴の確認など、必要なセキュリティ機能があるかを確認しておきましょう。

運用ルールは、細かくしすぎる必要はありません。重要な内容を簡潔にまとめ、職員全員が確認できる状態にしておくことが大切です。

5.スモールスタートでの導入と検証

最初から全体に広げるのではなく、一部の業務や担当者で試し、効果を確認しながら広げていく方法がおすすめです。一度に導入すると、問題が起きたときに原因を見つけにくくなります。

まずは、次のような形で始めると進めやすいでしょう。

  • 顧問先を3〜5社ほどに絞る

  • 担当者は1〜2名にする

  • 3か月ほど使い、変化を記録する

面談準備にかかる時間や経営の話に使える時間、顧問先からの反応などを確認しましょう。

思うような効果が出なかった場合は、ツールそのものだけでなく、使い方や手順、元になるデータに問題がないかも確認します。

うまくいった方法が見つかったら、実際に使った担当者が、結果や注意点を事務所内で共有するとよいでしょう。現場で使った人の話は、他の職員にも伝わりやすくなります。

6.顧問先を巻き込んだ展開

事務所内でツールの使い方や運用が固まってきたら、顧問先にも少しずつ広げていきます。事務所内での利用経験が少ない段階では、顧問先からの質問にすぐ対応できない場合もあるため、まずは内部で使い方を確認しておくと安心です。

顧問先への取り組みとしては、次のようなものがあります。

  • クラウド会計の導入支援を有料サービスとして案内する

  • 領収書や請求書の受け渡しを、郵送からクラウド共有に切り替える

  • 経営分析ツールの画面を共有し、顧問先もいつでも数字を確認できるようにする

案内するときは、事務所側の都合ではなく、顧問先にどんなメリットがあるかを伝えることが大切です。「郵送の手間が減る」「月の途中でも数字を確認できる」といった具体的な利点を示すと、理解も得やすくなります。

ここまで進んだ後は、経営支援やクラウド導入支援まで含めてサービス内容を整理し、必要に応じて提案してみるのもよいでしょう。

税理士事務所のDXなら「metrics」

ここまで見てきたように、税理士事務所のDXは、記帳や申告の効率化だけでなく、顧問先への経営支援にもつなげていくことが大切です。経営分析まで含めて取り組みたい場合は、当社が開発・運営するmetricsもご検討ください。

metricsは、会計データを分かりやすく整理し、経営判断に必要な情報を確認できるクラウド経営分析ツールです。全国の税理士法人や会計事務所のほか、BPO事業を行う企業でも利用されています。

2026年のアップデートではAI機能が強化され、AI CFOとのやり取りを通じて、予算管理やダッシュボードの作成も行えるようになりました。主な特徴は次の4つです。

  • 見やすいダッシュボードでスマートな経営支援を実現

  • 予算管理と将来予測で未来に繋がる経営を支援

  • AIが経営データを読み解き意思決定をサポート

  • ストレスフリーな初期設定と自動API連携

見やすいダッシュボードでスマートな経営支援を実現

顧問先ごとに、確認したい数字をまとめたダッシュボードを作成できます。一度設定すれば会計ソフトの更新内容が反映されるため、毎月Excelでレポートを作り直す手間を減らせます。

ダッシュボードでは、数字を一覧で確認するだけでなく、損益分岐点グラフなどを使って、売上や利益の動きを分かりやすく確認できるでしょう。

気になる数字はその場で仕訳まで確認できるため、面談後にあらためて調べる手間も減らせます。

予算管理と将来予測で未来に繋がる経営を支援

数字を入力すると損益の見込みが更新されるため、経営者と同じ画面を見ながら来期の計画を考えられます。

細かな予算を作る時間が取れない顧問先には、「自動予測」モードも利用できます。個別に予算を設定しなくても、過去の実績をもとに期末の見込みを算出できるため、少ない手間で今後の数字を確認できるでしょう。

作成した予算と自動予測はダッシュボード上で切り替えて確認でき、現在の実績と今後の見込みを比べながら、設備投資や採用などについて数字をもとに話し合えます。

AIが経営データを読み解き意思決定をサポート

metricsには、経営データの分析やダッシュボードの作成、予算案の作成を支援するAIエージェント「AI CFO」が搭載されています。資料の内容を確認し、気になる数値や確認したい内容を整理する際にも活用できる点も特徴です。

AIを使って確認すべき点を整理することで、経験が豊富でないスタッフでも分析や面談準備を進めやすくなります。

また、顧問先ごとの確認方法や業種ごとのチェック項目をナレッジとして登録しておけば、担当者が変わった場合も情報を引き継ぎやすくなります。特定の担当者だけに知識が偏るのを防ぎ、事務所内で一定の品質を保ちやすくなる点もメリットです。

実際の操作画面は、次のYouTube動画でも確認できます。

metrics AI CFO 機能紹介プレイリスト|YouTube

ストレスフリーな初期設定と自動API連携

freeeマネーフォワードとAPI連携でき、連携を許可すると、仕訳や帳票の取り込み、勘定科目の設定まで自動で行われます。

初回の連携では過去分を含む各期のデータをまとめて取得できるため、顧問先ごとにデータを手作業で整える手間を減らせるでしょう。新しく契約した顧問先でも、連携後すぐにダッシュボードを使い始められます。

データは定期的に自動更新されるため、面談のたびに会計ソフトから最新の数字を取り込み直す必要もありません。顧問先ごとのデータ更新にかかる作業を減らせる点もメリットです。

DXの手段として経営分析ツールを検討している方は、まず無料デモで実際の画面に触れてみてください。

リンクをクリックすると日程調整ページが開きます。ご都合のよい日時を選んで、ご予約ください。

税理士事務所へのmetrics導入事例

metricsは、税理士事務所ごとの課題や目指す支援内容に合わせて活用されています。

ここでは、業務の効率化や経営支援の充実につながった4つの導入事例を紹介します。

  • 伊藤会計事務所|属人化していた面談準備を定型化し、新人でも同じ品質の報告へ

  • エンジョイント税理士法人|試算表中心の報告会から、未来を話し合う場へ

  • スタートアップ税理士法人|コストと見られていた経理代行を、投資と呼べる支援へ

  • みらいと税理士法人|レポート作成の工数を削り、経営者との対話を能動的に

伊藤会計事務所|属人化していた面談準備を定型化し、新人でも同じ品質の報告へ

項目

内容

抱えていた課題

面談準備の内容や時間が担当者によって異なり、進め方が統一されていなかった

metricsによる解決策

面談前にmetricsのウィジェットを確認する手順を決め、準備の流れを統一した

効果

面談準備の時間を減らし、担当者による報告内容のばらつきを抑えられた

伊藤会計事務所様では、顧客との面談準備を担当者ごとに進めており、確認する内容や準備にかかる時間に差がありました。特に経験が比較的浅いスタッフは、何を確認すべきか判断するのに時間がかかることもありました。

そこで、面談前に「metricsで作成したウィジェットを確認する」という手順を決め、準備の進め方を統一しました。必要な情報を同じ流れで確認できるようになり、準備時間の短縮と報告内容のばらつきの軽減につながっています。

担当者が変わった場合も、これまで使っていたウィジェットを引き継げるため、引き継ぎを進めやすくなりました。経験に左右されにくい形で面談準備を行えるようになった点も、大きなメリットです。

エンジョイント税理士法人|試算表中心の報告会から、未来を話し合う場へ

項目

内容

抱えていた課題

試算表を中心に説明していたため、経験が比較的浅いメンバーほど過去から現在までの報告に時間がかかっていた

metricsによる解決策

報告時に使うウィジェットを全社で統一し、担当者によるばらつきを減らした

効果

過去の報告だけで終わらず、今後の経営について話す時間を増やせた

エンジョイント税理士法人様では、クライアントとの面談で、過去や現在の数字を確認するだけでなく、今後の経営について話すことを大切にしていました。一方、試算表を中心とした報告では、経験が比較的浅いメンバーは数字の説明に時間がかかり、将来の話まで十分にできないことが課題でした。

そこで、報告時に使うmetricsのウィジェットを全社で統一し、誰が担当しても同じ流れで説明できるようにしました。あわせて、日々の業務でもmetricsでの報告を意識して、必要な情報を整理するようにしています。

数字をグラフや指標で確認できるようになったことで、経験の浅いメンバーでも重要なポイントを伝えやすくなりました。その結果、過去の数字を説明するだけでなく、経営上の課題や今後の方針について話す面談が増えています。

スタートアップ税理士法人|コストと見られていた経理代行を、投資と呼べる支援へ

項目

内容

抱えていた課題

試算表を渡すだけでは、経営者が数字を経営や資金調達にどう生かせばよいか分かりにくかった

metricsによる解決策

freeeの部門・品目・取引先などの情報を連携し、入力した内容がレポートに反映されるようにした

効果

面談準備がしやすくなり、経営や資金調達の提案により多くの時間を使えるようになった

スタートアップ税理士法人様では、経理代行の価値を経営者に十分伝えにくいことが課題でした。試算表を渡すだけでは、その数字を経営や資金調達にどう生かせばよいか分かりにくく、経理代行が単なるコストとして見られることもありました。

metricsの導入後は、freeeの部門・品目・取引先などの情報を連携し、会計ソフトに入力した内容がレポートへ反映されるようになりました。最新の数字をグラフや指標で確認できるため、経営者への説明にもそのまま活用しやすくなっています。

また、面談に必要な数字をレポート上で確認できるようになり、面談のために別途資料を作成したり、数字を整理したりする負担も軽減されました。その結果、面談では数字の報告にとどまらず、経営方針や資金調達について話す機会も増えています。

実際に大規模な資金調達につながった事例もあり、税理士や社労士などグループ内で数字を共有しながら、連携して支援できるようになっています。

みらいと税理士法人|レポート作成の工数を削り、経営者との対話を能動的に

項目

内容

抱えていた課題

1社あたり1〜2時間、月次で最大30時間を財務分析やレポート作成に使っており、担当者によって内容にも差があった

metricsによる解決策

会計ソフトとのAPI連携でデータ更新を自動化し、ウィジェットの統一とAI CFOを活用した

効果

レポート作成が1〜2時間から約3分に短縮され、経営について話す時間を増やせた

みらいと税理士法人様では、財務分析やレポート作成に時間がかかることに加え、担当者によって内容に差が出ることも課題でした。1社あたり1〜2時間、月次では最大30時間を使っており、業種に合わせた分析ができるかどうかも担当者の経験に左右されていました。

そこで、会計ソフトとのAPI連携でデータの取得・更新を自動化し、報告に使うウィジェットも統一しました。さらに、AI CFOを使って「なぜこの数字が下がっているのか」といった点を確認できるようにし、分析や報告の準備を進めやすくしています。

その結果、レポート作成にかかる時間は1〜2時間から約3分まで短縮されました。「人をもう一人雇った場合、利益はどう変わるか」といった今後の経営について話す機会も増え、支援中の5社すべてが過去最高売上を更新しました。対応できる顧問先についても、5社から10社程度まで増やせる見通しが立っています。

まとめ

本記事では、税理士事務所におけるDXの意味や背景、課題、進め方について解説しました。

税理士事務所のDXは、紙をデータに置き換えるだけではありません。記帳や申告を効率化し、そこで生まれた時間を顧問先への経営支援に使うところまで含めて考えることが大切です。

また、クラウド会計の普及や電子帳簿保存法、インボイス制度への対応など、事務所を取り巻く環境も変わっています。一方で、IT人材の不足や紙での業務、費用対効果の分かりにくさなど、進めるうえでの課題もあります。

DXの方法は、書籍・セミナー、外部支援、内製、専用ツールの4つです。どれかひとつに絞るのではなく、事務所の規模や予算、人材、顧問先のニーズに合わせて組み合わせるとよいでしょう。

進める際は、まず目的と現状を整理し、効果が出やすい業務から少しずつ試すことが重要です。セキュリティや運用ルールも決めたうえで、うまくいった方法を事務所内や顧問先へ広げていきましょう。

まずは、月次報告など日常業務にどれくらい時間がかかっているかを記録してみてください。今の負担が分かれば、どこから見直すべきか判断しやすくなります。

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